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楠木建 ようするにこういうこと

森を見て木を見ず、葉を見て木を見ず

楠木 建 [一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授]
【第12回】 2012年3月26日
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 テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有選手は、6年間で総額6000万ドルの契約を結んだと伝えられています。個人の所得としては想像もつかない金額ですが、彼ほどの才能を持った選手ですから、当然といえば当然でしょう。

 ところで、この高額の契約の背景には、ダルビッシュ選手の才能や実績とは別の要因も絡んでいます。それは彼が「野球という種目を選んだ」ということです。

 たとえば、アンドレア・シェップ。この天才アスリートの名前を知っている人はあまり多くないでしょう。

 彼女は空前絶後のカーリング選手でありまして、ドイツ代表チームの中心人物です。単純に比較はできないにしても、シェップのアスリートとしての才能や実績、努力水準はダルビッシュ級かもしれません。

 しかし、そうしたとびぬけた実績や才能があっても、マイナースポーツであるカーリング選手のシェップが、野球選手であるダルビッシュのような高額の報酬を手にすることはまず不可能です。

利益の源泉:3つのレイヤー

 何が言いたいのかというと、ビジネスの目標が長期利益の最大化にあるとしても、利益の源泉にはいくつかの異なったレイヤーがあるということです。いちばんわかりやすいのは「景気」です。景気が良ければ利益は相対的に大きくなり、景気が冷え込めば利益も縮小する。当たり前の話です。

 たとえば、リーマンショックのようなことが起きて金融危機が発生すれば、景気が悪化し、その結果として個別の企業の利益水準も低下します。ヨーロッパで金融不安が発生すれば、当然のことながら景気に悪影響が出て、企業の収益性も低下を余儀なくされます。

 東日本大震災が起きた直後も景気が冷え込みました。日本企業の多くが業績に負の影響を受けました。その後しばらくたつと、今度は復興需要が発生します。これは景気に対して正の効果をもち、その影響で利益が上振れする企業も出てきます。

 第2の利益の源泉が「業界の競争構造」です。

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楠木 建 [一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授]

1964年東京生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。2010年5月に発行した『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)は、本格経営書として異例のベストセラーとなり、「ビジネス書大賞2011」の大賞を受賞した。ツイッターアカウントは@kenkusunoki


楠木建 ようするにこういうこと

本格経営書として異例のベストセラー『ストーリーとしての競争戦略』の著者、楠木建一橋大学大学院教授が、日々の出合いや観察からことの本質を見極め、閉塞を打ち破るアイデアを提言。
 

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