会員制リゾートクラブが人気を取り戻している。 高価格帯ばかりでなく、低価格帯の独自路線のクラブにも人気が集まっている。リゾート会員権仲介の大手「e会員権」の涌井智子代表取締役に、現在の市場の動向とクラブ選びのポイントを聞いた。

 今、リゾート会員権の市場は活況を呈しているという。リゾート会員権仲介大手の「e会員権」の涌井智子代表取締役によれば、2008年から10年間の定点観測の調査で、中古市場の成約件数は2.1倍に増え、問い合わせ件数もほぼ倍になっているという。

 特にアベノミクス以降、株高の恩恵を受けた個人の資産家や、好業績のオーナー企業や医療法人の経営者、また1部上場企業などの役員クラスの購入が多いという。

 最近の傾向としては、会員制リゾートクラブの二極化がある。一つは超高級志向だ。

e会員権 代表取締役
涌井智子
北海道出身。1988年藤田観光に入社。人事・広報・経営企画などを経て、リゾート会員権の営業に。2000年に開始されたインターネットを中心媒体とするリゾート会員権事業(現e会員権)に02年から加わる

「価格帯としては、中古市場で500万~1000万円のクラス。客室の設備もぜいたくで、サービスもワンランク上のもの。メンバーシップ自体にステータスが感じられるクラブで、このクラスで特徴的なのは、価格帯の高いものから売れてゆくこと。ただし売る人が少ないという事情もあり、中にはプレミアが付いて新規募集時より高くなるケースもあります」

 もう一方は、名義変更料を入れても100万円以内の低価格帯の会員権だ。

「これは低価格帯というよりも、独自路線のリゾートクラブといった方が正確で、愛犬と一緒に泊まれるホテルや、一戸建ての別荘タイプのもの、あるいはアクティビティーや食事など、テーマを持って独自性を打ち出しているクラブが人気を集めています。こちらはリタイア前後の方々をはじめ、30~50代の比較的若い層が購入されています」

 

本物の充足感を求める一方、
経済メリットの追求も

 かつて会員制リゾートクラブは、会員権を資産として所有するという考え方が主流だった。現在もその部分は残しているが、それよりも実際に「利用する価値」に重点が移っている。

「高級リゾート会員権を購入された方に、なぜ購入したのかと尋ねると、“このリゾートで過ごすために一生懸命働いているんです”と言われたことがあります。ステータスを求めるという側面もありますが、忙しく時間がない方たちにとって、本物の充足感や上質なくつろぎを得られる場所、心身共にリフレッシュできる場所として、純粋に活用されているのが現在の高級リゾート施設なのだと思います」

 一方、独自路線のリゾートクラブの場合は、経済メリットの追求という面が大きい。1回当たりの利用料が安いため、まとまった期間“素泊まり”して、好きなことに熱中することもできるし、多人数で利用すれば、ホテルに宿泊するよりも節約できる。

「最近の傾向としては、家族との時間を大切にするために購入する方が増えていること。旅行に行くよりも、会員権を持っているほうが予定を立てやすく、子どもたちを誘いやすいというメリットがあります。全国展開のリゾートクラブならば、季節や目的に合わせてさまざまな所に行けるし、どの施設でも均一のサービスを享受できる安心感もあります」