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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

日銀の国債引受けは、なぜ「悪魔的手法」なのか
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
【第59回】 2012年4月4日
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 日銀の金融政策を巡っては、様々な論争がある。その中で、究極の禁じ手とされる日銀の国債引受けについて考えてみたい。

 思考実験として、増税をすることを止めて、政府の必要資金をすべて日銀からの資金供給で賄うことにしたとする。皆さんは、「消費税の増税をせずに、日銀が国債発行分を全て引き受けて、税収不足を補えばよいのではないか」と問われたならば、その可否をどう答えるか。

財政管理は
通貨の信認につながる

 筆者がその問いかけに回答するならば、「政府がお札を勝手に印刷すると信用を失うから、止めた方がよい」と答える。極端な例として、もしも紙に「1,000,000円也」とペンで書いて、自動車購入の代金に充てればどうなるか。

 もちろん、それは詐欺的行為である。なぜならば、100万円と書かれた紙と、自動車を交換しようとすれば、間違いなく不等価交換になるからだ。

 では、100枚の1万円札と、自動車の交換はどうか。それは、等価交換だからOKである。お札の表示は、価値の裏付けがある。価値の裏付けとは、政府がお札の額面で納税などの支払いに充てることを保証していることにある。

 国民は、政府が1万円で受け取るのだから、同様に1万円の価値で相互取引をしてもよいと認めるのである。1万円札に与えられた信用が、連鎖的に認められて、不換紙幣の価値が成り立つ。

 紙幣の歴史では、金の代用品として兌換券が流通し、それがやがて金の裏付けのない不換紙幣へと変わっていった。不換紙幣は、その価値が政府・中央銀行によって厳格に管理されていることが、信用の根拠になっている。管理通貨制度とは、不換紙幣を流通させるための信用確保の制度だとも言える。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 

島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト]

しまもと・こうじ/1990年、東京大学卒業、日本興業銀行入社。調査部門で金利分析や経済予測を担当。2000年からBNPパリバ証券で投資調査本部長兼チーフストラテジストとして金融市場予測を担う。日本経済新聞社の債券アナリスト・エコノミスト人気調査の債券部門では06、08年に1位。金融庁の金融市場戦略チームや金融税制研究会、行政刷新会議の事業仕分けなどに参加。

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

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