ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄の「経済大転換論」

日銀引き受けによる国債発行は
インフレをもたらすか?

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第11回】 2012年3月22日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 前回述べたように、これまで日銀が銀行から国債を買い上げることができたのは、利子率が低下してきたからである。利子率が上昇すると、国債売却は銀行にキャピタルロスをもたらすので、銀行は国債を売るかどうかわからない。つまり、これまで述べたオペレーションは、実行できなくなる可能性がある。

 では、日銀が直接に政府から購入すればどうか? これについて以下に検討しよう。

日銀引き受けなら、
無制限に国債を発行できる

 日銀が直接に政府から購入することを「日銀引き受け」という。長期国債の日銀引き受けは、財政法の第5条で禁止されている。しかし、但し書きによって、国会が議決すれば実行できることになっている(なお、短期国債の日銀引き受けは可能であり、実際行なわれている)。

 この場合には、日銀のバランスシートで、資産で国債が増え、負債で政府預金が増える。これは、政府と日銀が合意すればできることであり、銀行の行動や市中の状況とはまったく無関係に、いくらでも国債を引き受けることができる。これが、市中からの買い上げと本質的に違う点である。

 いくらでもできるから、政府は国債発行に何のためらいもなくなり、財政規律が弛緩する。そして無駄な支出が増加するおそれがある。財政法が日銀引き受け国債を禁止しているのは、このためだ。

 また、こうした操作は、「日銀券を刷って財政支出をファイナンスすることを意味するから、インフレーションを引き起こす」とも言われれる。インフレーションが生じると、経済活動は著しく攪乱される。とりわけ経済的弱者は、多大の負担を負う。

 だから、日銀引き受けは望ましくないのだと言われる。果たしてそうなのだろうか?

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄の「経済大転換論」

日本経済は今、戦後もっとも大きな転換期にさしかかっている。日本の成長を支えてきた自動車業界や電機業界などの製造業の衰退は著しく、人口減や高齢化も進む。日本経済の前提が大きく崩れている今、日本経済はどう転換すべきなのだろうか。野口悠紀雄氏が解説する。

「野口悠紀雄の「経済大転換論」」

⇒バックナンバー一覧