皆さんこんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。
5月1日から2日にかけて開催された米国の連邦公開市場委員会(FOMC)は、市場の予想通り政策金利(FFレート)の誘導レンジを1.50%~1.75%で据え置くことを、全会一致で決定しました。米国の景気動向から判断する限り、今後も連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを継続することは、ほぼ間違いないと見られます。問題は、利上げの速度とタイミングですが、その鍵を握っているのは物価です。そこで、今回は米国の物価動向に焦点を当て、それをもとに今後の金融政策について考察します。
FRBが注視する個人消費デフレーター
本題に入る前に、米国の物価指標について見ておきます。物価の動向を見るための代表的な指標には、生産者の出荷価格に焦点を当てた「生産者物価」と、消費者が購入する財・サービスの価格に着目した「消費者物価指数(CPI)」「個人消費支出価格指数(PCED)」がありますが、物価動向を見るうえで注目されるのは後者のCPIとPCEDです。
CPIとPCEDは、基本的に消費者が購入する財・サービスの平均的な価格の動向を示していますが、PCEは個人以外の非営利団体の消費動向も含んでいます。対象となる費目についても、CPIは消費者が直接支払う消費支出のみに限定しているのに対し、PCE(個人消費支出)は個人以外にも非営利組織が支払った金額も含みます。例えば、保険制度を使って医療サービスを受けた場合、CPIでは自分で支払った分だけしか考慮されませんが、PCEDでは会社負担分も含まれます。
指数の計算方法も、CPIは指数を構成する項目のウエイトを基準時点のウエイトに固定するラスパイレス方式、PCEDは比較時点のウエイトを用いるパーシェ指数とラスパイレス指数の幾何平均の連鎖指数を用います。
消費者は通常、価格が上昇した商品の購入を控え、替わりに安い価格の商品の購入を増やすという行動をとりますが、ラスパイレス方式で算出されるCPIでは、こうした低価格品への代替効果を反映させることができません。現在のように消費者の低価格志向が強い環境の下では、CPIは物価上昇率の鈍化を実態よりも過小評価してしまいがちです。いわゆる上方バイアスの問題であり、CPIコア指数の上昇率はPCEDコア指数の上昇率よりも高くなる傾向があります。