「フリーランス麻酔科医などというのはもっての外」

 2015年、日本麻酔科学会によるアンケート調査の結果が学会自身を驚かせた。「一般病院の59%(これは想定の範囲内)、大学病院の39%が外部からフリーランス医師を雇っている」というものだったのだ。

 医師紹介会社に頼らないと業務を回せない大学病院の存在も明らかになった。現実の方がドラマに近づいたのだ。

「ドクターX」の主人公が「あのバイト女医め!」と病院幹部に忌み嫌われているように、現実のフリーランス医師も厚生労働省幹部には不評である。

 2016年の厚労省の医師需給分科会では「医療界で本当に大きな問題」(第4回会議)、「フリーランス麻酔科医などというのはもっての外」(第5回会議)という、不快感丸出しの発言が議事録に残っている。これは、フリーランス医師が、厚労省で論議される問題にスケールアップしたということも示している。

 ドクターXに登場する若手医師たちは、主人公を嫌っていない。ひそかに尊敬したり、上司の目を盗んで助けを求めたりする。現実の若手医師にとっても、フリーランスは現実味のあるキャリアパスの一つとなった。

 かつては医者である夫が「大学病院を辞めてフリーランスになりたい」と言い出せば、妻は大反対するのが相場だった。ドクターXの大ヒット以降は、妻の方から「ねえ、フリーランスって儲かるんでしょ……あなたもそろそろ考えない?」と言い出すことも増えているらしい。

 若き同業者が増え、フリーランス麻酔科医はかつてのような売り手市場ではなくなりつつあり、自分自身のビジネスを考えるとビミョーでもある。まあ、これがマーケットという名の「神の見えざる手」でもあるのだ。