誰かを説得しなければならない場面なら、あなたの服装が聴衆に受け入れられるものならいいが、そうでないかぎり、服装で自己主張するのはよくない。動物愛護団体(PETA)のオフィスに迷彩柄のネクタイをしていくのは、お洒落かもしれないが、PETAの人たちは眉をしかめるかもしれない。

正直に言えば、ファッションについてのアドバイスをするのに私は適任ではない。以前、幹部クラスのビジネスマンやエディター仲間の前で話さなくてはならない仕事があった。そのときまで、私はコーデュロイが男性のファッションで最もいいものだと思っていた。そこで私は、ニューハンプシャーで自分に手の届きそうな紳士服店の中で一番いい店に行き、ジョーという店員に応対を頼んだ。彼はこざっぱりとした服を着ていて、その後に会う予定のビジネスマンたちのようだった。私は、さしあたって2日間の出張に必要な最低限の服を調達したい、成功した人たちを観察して自分がどんな服を着ればいいかわかったら、また来店する、と彼に伝えた。

そのときジョーは、禅問答のようなアドバイスをくれた。「一番高そうな靴を履いている人をよく見るといい」というのだ。靴を真似するということではない。そもそも私には、そんなに高い靴は買えない。そんな人が着ているスーツだって、私の予算では買えないだろう。だがジョーが言うには、そういう人が着ているシャツやネクタイの色や柄を真似ればいいのだという。

わかりやすく言い換えてみたが、実際にはジョーはもっとわかりにくい言い回しで言った。

一番高い靴を履いている人を探してください。
でも、その靴を買ってはいけませんよ、色を買うんです。

自分のファッションを担当してくれるジョーみたいな店員を、みんなもつべきだ。彼はその後何年も、私のファッション・アドバイザーとなってくれた。服装は人をつくるのではない。服装は「きっかけ」をつくるのだ。

その場にふさわしい言葉づかいで説得力を増す

服装に加えて、適切な言葉づかいも知らなければならない。ビジネスにおいては、これが特に重要だ。パワーポイントを使ったプレゼンテーションでは、洗練されたディコーラム(適切さ)が必要になる。語り手は、聞き手に応じて、いく通りかのプレゼンテーションをしなければならない。