日本におけるソーシャルメディアの利用者は延べ7000万人。利用者の急拡大に合わせて企業の参入も盛んになってきているが、「まだ本質が十分に理解されていない」と指摘するのは、慶應義塾大学政策・メディア研究科・特別招聘教授の夏野剛氏だ。企業はソーシャルメディアとどう向き合うべきなのか詳しく聞いた。

――最近利用者が急速に拡大しているソーシャルメディアですが、その本質はどこにあるとお考えですか。

なつの・たけし/慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授。1965年神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。ペンシルバニア大学経営大学院 ウォートンスクールでMBA取得。NTTドコモで「iモード」の立ち上げに携わり、2005年に執行役員に。08年に同社退社。同年5月より現職。ドワン ゴ、セガサミーホールディングス、SBIホールディングス、ぴあ、トランスコスモス、GREEほか数社の取締役を兼任。

 TwitterやFacebookに代表されるソーシャルメディアは、ひと言でいえばインターネット上のコミュニケーションの場であり、個人が情報発信するための媒体。従来の掲示板やブログとの相違点は、人と人とのつながりの強さにあります。

 実名での登録が基本のFacebookでは、友人や社内外の仕事関係者などリアル社会と変わらないつながりがインターネット上にも構築されています。さらに、遠方にいる知人ともつながり続けることができますし、もう十数年も連絡を取っていなかった友人ともつながりが生まれます。

 さらに、個人が発した言葉が共感を呼び、ソーシャルメディアを介して共振し、社会を大きく変えるケースもあります。顕著な例が、チュニジア、エジプト、リビアで長期政権を崩壊にまで追い込み「アラブの春」と言われた民主化運動。そのデモや抗議活動の呼び掛けに活用されたのがFacebookなどのソーシャルメディアでした。