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西沢和彦の「税と社会保障抜本改革」入門

消費税率引き上げが医療崩壊を加速する!?

西沢和彦 [日本総合研究所調査部上席主任研究員]
【第12回】 2012年4月10日
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消費税率を引き上げると、医療機関の経営が打撃を受けるというパラドックスが生じる。それは、現行の消費税制において、医療機関に仕入税額控除が認められていないためだ。これを防ぐには医療サービスを課税取引とし、医療機関に仕入税額控除を認めることである。

消費税率引き上げのパラドックス

 前回まで年金、医療の順に社会保障制度を扱ってきた。今回から社会保障制度との関連を意識しつつ税制に視点を移そう。

 まず消費税である。野田政権が推し進める社会保障・税一体改革は、社会保障制度を維持・充実するための消費税率引き上げを標榜しているが、実は、消費税率を引き上げると、医療機関経営が深刻な打撃を受けるというパラドックスが生じる。これは、極めて重要な問題でありながら、今回の社会保障・税一体改革では、ほとんど議論もされないまま、先送りとなっている。

仕入税額控除の理解が鍵

 このパラドックスを理解する鍵は、消費税制とりわけ仕入税額控除という仕組みを押さえることにある。説明を簡素化するため、原材料製造業者、完成品製造業者、小売業者、消費者の4者による財・サービスの生産・流通・小売経路を想定する(次ページ図表1)。財・サービスは全て消費税の課税取引であるとしよう。金額は例示である。

 まず、原材料製造業者は、2万円の原材料を製造し、これを完成品製造業者に2万円プラス消費税1000円(=2万円×5%)で販売する(この原材料製造業者は、他の業者から全く仕入れをすることなく原材料を製造したと仮定しておこう)。原材料製造業者は、完成品製造業者から受け取った消費税1000円を税務署に納税する。

次のページ>> 仕入税額控除の仕組み
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西沢和彦 [日本総合研究所調査部上席主任研究員]

ニシザワ カズヒコ/1989年3月一橋大学社会学部卒業、同年年4月 三井銀行入行、98年より現職。2002年年3月法政大学修士(経済学)。主な著書に『税と社会保障の抜本改革』(日本経済新聞出版社、11年6月)『年金制度は誰のものか』(日本経済新聞出版社08年4月、第51回日経・経済図書文化賞) など。(現在の公職)社会保障審議会日本年金機構評価部会委員、社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会委員。


西沢和彦の「税と社会保障抜本改革」入門

増加する社会保障費の財源確保に向けて、政府は消費税引き上げの議論を本格化させている。だが、社会保障をめぐる議論は複雑かつ専門的で、国民は改革の是非を判断できない状態に置かれている。社会保障の専門家として名高い日本総研の西沢和彦主任研究員が、年金をはじめとする社会保障制度の仕組みと問題点を、できるだけ平易に解説し、ひとりひとりがこの問題を考える材料を提供する。

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