生活保護“子ども優先“とはいえ生活困窮者を普遍的に救える野党の生活保護改正案は、貧困解消の切り札かもしれない(写真はイメージです)

「生活困窮者」と「子ども」
生活保護をめぐる与野党の不明瞭なバトル

 現在開催中の国会では、2つの「生活保護法改正案」が審議されている。1つは政府案、もう1つは野党案(民進(提出時)、立憲、希望(提出時)、共産、自由、社民)だ。しかし、政府の「生活困窮者自立支援法改正案」と、野党の「子どもの貧困底上げ法案(通称)」が、実質的に「生活保護法改正案(政府) 対 生活保護法改正案(野党)」の“バトル“であることは、詳細な報道や丁寧な解説がなければ、まず“一般ピープル”には気づかれないだろう。

 今回は、この不明瞭な“バトル“を読み解き、野党案の目的・内容・意義を眺めてみたい。

 まずは、政府案の“パッケージ“となっている生活困窮者自立支援法(2013年成立)だ。2015年の施行から3年後に、生活保護法と併せて見直すことは、成立時から附則に定められていた。とはいえ、正式名称「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案」を見て、「その”等“に、生活保護法が含まれているのでは」とピンと来る人は多くない。あまりにも国民に不親切すぎるだろう。

 ちなみに、政府案が衆議院本会議で4月27日に可決された際の結果は、衆議院議案審議経過情報に、「全会一致」「反対会派なし」と記載されている。野党は「モリ・カケ」問題や財務省前幹部のセクハラ問題などへの反発から欠席していた。生活保護法改正案は、言葉通りの「全会一致」で可決されたわけではない。しかし注意深く読めば、賛成会派が「自民党・公明党・日本維新の会」のみであったという記載を見つけることができる。

 公文書の作成・管理については、「モリ・カケ」問題に加えて陸上自衛隊のイラク派遣日報問題で関心が高まっているところであるが、本連載は「日本の公文書のリアル」ではなく「生活保護のリアル」なので、引き続き野党案の内容を紹介したい。野党案が成立する可能性は高くはないのだが、非常に重要かつ本質的な貧困政策を含んでいるからだ。

 野党が3月29日に提出した「生活保護法等の一部を改正する法律案」は、野党自身による「子どもの生活底上げ法案」という通称を持っている。生活保護法改正案に加え、児童扶養手当法・特別児童扶養手当法・国民年金法・厚生年金保険法の関連部分の改正がセットとなっている。しかし「子どもだけが対象なのか」と理解するのは早計だ。