生活保護イメージ写真生活保護法再改正案が6月末までの今国会で成立する可能性が高まった。国が事実上、生活保護を見捨てることになるとしたら、近い将来、起こり得ることは?(写真はイメージです)

生活保護法再改正案成立で
福祉事務所の外注は可能か

 今国会に提出されていた生活保護法再改正案をめぐる動きは、「モリ・カケ」問題、閣僚の失言や省庁幹部のスキャンダルに紛れた形となっていた。しかし2018年4月25日、自民・公明・維新のみが出席した衆議院・厚生労働委員会で可決され、6月末までの今国会で成立する可能性が高まった。6月には、生活保護基準の引き下げも厚労大臣によって決定される予定だ。

 生活保護法再改正案には、現在は不正受給の場合に限られている生活保護費からの天引き徴収を、役所側のミスによる不正ではない「受け取り過ぎ」にも拡大する内容が含まれている。これは、免責債権を“なし崩し”に非免責債権化することとイコールだ。この他、近未来の危険な成り行きにつながりそうな改正内容が数多く含まれている。

 ただ1つの明るい話題は、生活保護世帯の高校生が大学などに進学する場合の一時金の給付など、生活保護世帯からの大学進学支援が盛り込まれることだ。一歩前進ではあるのだが、生活保護のもとでの大学進学が認められるわけではない。生活保護世帯から大学に進学する子どもたちの学生生活の苛酷さは、ほんの少し緩和される程度だろう。

 そもそも、生活保護のもとでの大学進学を認めるために法改正を行う必要はない。厚労省の通知一通で済む。明るい話題というよりは、“目くらまし“のようなものに見える。

 総合すると、生活保護法改正案は私にはまるでディストピア小説の筋書きのようにしか見えない。溜息をつく私に、東京都内で数多くの福祉の現場を経験してきたベテラン公務員・Aさん(58歳)は、「福祉事務所の外注化」という可能性を語る。とはいえ、今回の生活保護法再改正案には含まれておらず、現在のところはAさんの豊かな想像力の産物、あるいは妄想かもしれない。もし実現すると、日本はどのような世界になるのだろうか。

「福祉事務所の外注化」という言葉を聞いて、私が真っ先に思い浮かべたのは、多くの公立図書館で導入されている「指定管理」だ。私の住む東京都杉並区にも、区直営から指定管理へと移行した図書館が多数ある。