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今週のキーワード 真壁昭夫

政府のエネルギー政策はなぜ“場当たり”なのか?
原発全停止を前に見定めるべき「安全と成長」の岐路

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第222回】 2012年4月17日
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原油価格上昇と新エネルギーへの期待
「原発全停止」を前にブレる日本の政策

 今後、世界経済の拡大に関して、エネルギー資源の価格上昇が制約条件の一つとなりそうだ。足もとで、原油価格の上昇によるガソリン価格高騰は、米国をはじめ主要国の経済に影を落としている。

 また中長期的に見ても、エネルギー消費量が増加することが予想され、主要国にとってエネルギー資源の確保が重要な課題の1つになる。

 そうした状況を反映して、最近、世界中でエネルギーを巡って様々なことが起きている。1つは、中東地域の地政学的リスクの高まりだ。

 イランの核開発に関する不透明感が高まり、原油価格が上昇すると、米国をはじめ世界経済にマイナスの影響が及ぶことが懸念される。それは、緩やかな回復過程を歩む米国経済の足を引っ張りかねない要素だ。

 2つ目は、新しいエネルギー資源=シェールガスに対する注目の高まりだ。最近、北米産のシェールガスの開発が活発化している。シェールガスの埋蔵は北米だけではなく、欧州や中国等でも確認されており、生産国が分散していることもあり、主なエネルギー資源である原油の特定地域への依存度を低下させることができる。

 それは、世界経済にとってメリットになる。三菱商事やロイヤル・ダッチ・シェル、中国石油天然気集団、韓国ガス公社は、共同でシェールガスから液化天然ガス(LNG)を北米の西海岸で生産する合弁事業を始めるという。

 一方、わが国に目を転じると、このまま行けば5月上旬に国内54基の原子力発電所が全て休止することになる。政府は関西電力大飯原発(福井県)3、4号機の再稼働を要請しているが、長期的なエネルギー政策を明確にすることなく、依然として場当たり的な対応を続けている。福井県や周辺自治体は、再稼働にあたって慎重な姿勢を崩していない。

 現在は海外からのLNGの大量輸入によって、何とか急場をしのいでいるものの、夏の電力需要期に、どれだけ電力を安定して供給できるかは、経済にとっても我々の日常生活にとっても、不安材料が残る。

 政府は、早い時期に中長期的な視点に立って、わが国のエネルギーをどうするべきかを真剣に考えるべきだ。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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