川上量生カドカワ社長「数学を諦めることは人生を諦めることと同じ」カドカワの川上量生社長  Photo by Yoshihisa Wada

未来を先取りしたい企業たちが今、数学の世界にどっと押し寄せている。ポケットマネーで数学のイベントを開き、社内で数学の勉強会を開催。さらに家庭教師を雇って学ぶほど数学にのめり込んでいるカドカワの川上量生社長に『週刊ダイヤモンド』6月30日号の第1特集「必修 使える!数学」に合わせて、なぜ数学を学ぶのか、直撃して聞いた。(『週刊ダイヤモンド』編集部 大矢博之、ライター・奥田由意)

──数学の勉強を今も続けている理由は何でしょうか。

 単純に面白いから、というとそれまでですが、「この世とは何か」という、世界の秘密を知りたいという欲求からです。

 例えば、「時間・空間とは何か」という問いに、僕はすごく興味があります。「ひも理論」のような現代の理論物理学の話などを専門書で理解するのは無理なので、一般向けの本などで読むわけです。しかし、数学が分からなければ、一般向けの解説本すら内容がよく分からない。かといって、子どもだましの比喩の説明では満足できない。

 そのため、数学を勉強して、物理学者が捉えている世界のイメージを自分の頭でも理解したかったというのが一番の理由です。

 そして、数学は難しい。この世にはさまざまな不思議がありますが、僕のように50歳にもなれば大抵のことは分かった気になってしまう。でも数学は、分かった気になることすらも難しい。数学こそが、人生で最後に残ったどうしても分からない謎なんですよ。