細胞の画像をAIで解析するサービス、若き「二刀流」研究者が開発菅原 皓(エルピクセル 研究開発本部チーフエンジニア) Photo by Masato Kato

 半年前からフランスで共同研究プロジェクトにいそしむ菅原皓、30歳。彼には二つの顔がある。

 一つは東京大学特任研究員。もう一つは東大発ベンチャーであるエルピクセルのチーフエンジニア。学術研究のために海を渡り、オフィスから離れて勤務する「リモートワーク」の実践者なのだ。

 2014年に東大大学院の研究室メンバーが立ち上げたエルピクセルとの出合いは、創業翌年のこと。東大薬学部を経て博士課程に進んでいた菅原が、本郷キャンパスにあるコワーキングスペースに机を置く同社にふらりと足を運んだのが始まりだった。

 エルピクセルは研究現場が膨大な画像データの処理に困っている状況を見かねて、画像解析支援システムを事業化していた。

 研究現場では日々、顕微鏡で撮った生物の画像を解析する作業が生じる。画像技術や機器の進化に伴い画像情報量が膨大になった現代、ウエットな研究においてデジタル技術を使ったドライな画像解析スキルが必要になっているが、ライフサイエンス研究者の大半は画像処理を学んではこなかった。画像解析のエンジニアが研究に従事していることはそう多くない。

 IT化の波に乗れぬまま、昔ながらに目視や手作業で細胞の数を数え続けている現場もあり、これでは研究者ではなく、ただの作業者になってしまう。