古い固定化した発想は、経営陣から捨て去られている

 そしてもうひとつ、働き方が変わった。リモートワークの拡大だ。会社に来なければ協働ができないわけではない時代。それこそ、マイクロソフトが手がけているOffice 365を使えば、パソコンやモバイルデバイスで簡単につながることができるのだ。岡部氏は言う。

「最も効率のいい働き方を自分で判断すればいいわけです。オフィスでもいいし、家でやってもいいし、空港からSkypeでアクセスしてもいい。場所で仕事を判断しない。ミーティングといっても、例えば空港で飛行機に乗るまでの時間はミーティングができる時間、という認識です」

 会議は会社に行ってやるものという発想は、マイクロソフトにはない。それこそ世界の複数箇所をつなげてのオンライン会議、なんていうのも当たり前に行われる。岡部氏は続ける。

「同じプロジェクトで仕事をしているアメリカ人の女性がいて、ちょうど本社への出張が翌週入ったので、挨拶をしたいと伝えたんです。そうしたら、私はシカゴにいるのよと言われてびっくりしたことがありました。シカゴの自宅で、いつも仕事をしていたんですね。アメリカ本社の仕事だから、本社のオフィスで仕事をしないといけないわけではない。それこそ、仕事をするロケーションとしての本社オフィス、という考え方がもうなくなるかもしれません」

 働く場所や時間にこだわる必要がなくなれば、解決できることはたくさんある。働きながら子育てをしたり、介護をしたりすることは、日本ほどのストレスはないという。それこそ勤務時間もフレキシブルだ。

 マイカーでの通勤が多いが、みんな渋滞を避けて、夕方3時や4時には会社を出てしまう。子どもを迎えに行って、夕食を一緒に取り、子どもが寝た後、また家で仕事に戻る。そんなワークスタイルを実践している人も少なくないという。

 実は、これまで何度も登場している経営執行チームの一人、ジャン=フィリップ・クルトワ氏はフランス人。セールスとマーケティングのグローバルの総責任者だが、オフィスはパリにある。彼のスタッフもパリにいる。

 経営執行チームだからアメリカ本社にいなければいけないわけではない。世界を出張ベースで飛び回ることも、それほど難しい時代ではないからである。古い固定化した発想は、経営陣から捨て去られているのだ。

(この原稿は書籍『マイクロソフト 再始動する最強企業』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)