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野口悠紀雄の「経済大転換論」

アメリカがデフレに落ち込まないのはなぜか?

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第16回】 2012年4月26日
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 これまで、つぎのことを述べてきた。

1.日本で消費者物価指数が上昇しないのは、財価格が下落しているからである。それは、新興国の工業化によって工業製品の価格が下落したからである。このことは、耐久消費財の価格下落がきわめて著しいことを見れば明らかだ。

2.サービス価格は、2008年頃までは上昇していた。それ以降マイナスの伸びになったのは、高校無償化など、政府の施策に起因するものが多い。

3.金融緩和が不十分であったり、需要が不足であったりすることによって生じる物価下落は、財にもサービスにも等しい率で生じるはずである。財とサービスの価格動向にこのように大きな差があることは、日本で「デフレ」と言われる現象が、教科書的な意味のデフレではないことを示している。それは、金融政策によって生じている現象ではない。そして、金融緩和をいかに進めたところで解決できる問題ではない。

 以上の議論に対して必ず出る反論は、「新興国工業化の影響は世界的なものであるから、日本だけが大きい影響を受けるはずはない。日本のデフレは、日本国内の需要が少ないことによって生じている現象だ」というものである。

 そこで、以下では、アメリカの消費者物価について見ることとしよう。「新興国工業化の影響を受けているにもかかわらず、アメリカの消費者物価が上昇しているのはなぜか?」というのが、ここで解明したい問題である。

アメリカの物価上昇は、
サービスとエネルギーによる

 【図表1】は、アメリカの消費者物価について、1999年と2011年を比較したものである(注1)。

 総合指数は、この12年間で、年率平均2.5%で上昇した。

 その大きな原因は、第1にサービスが年率2.9%という高い伸びを示したこと、第2にエネルギー、農産物の値上がりがあったためだ。

 サービスについては後で述べることとし、まず財価格について見よう。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄の「経済大転換論」

日本経済は今、戦後もっとも大きな転換期にさしかかっている。日本の成長を支えてきた自動車業界や電機業界などの製造業の衰退は著しく、人口減や高齢化も進む。日本経済の前提が大きく崩れている今、日本経済はどう転換すべきなのだろうか。野口悠紀雄氏が解説する。

「野口悠紀雄の「経済大転換論」」

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