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安東泰志の真・金融立国論

これが「利益相反天国」の日本の実態
「投資家の利益が第一」なくして金融立国なし

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第21回】 2012年5月7日
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 「金融立国を目指す」という場合に、何が重要なのか。連載第2回で検証したように、2010年6月に政府が公表した「新成長戦略」の中の金融戦略関連の具体的施策は、総合取引所の創設など極めて皮相的なものしか含まれていない。

 政治家や関係官庁の姿勢も、わかりやすく意訳してしまえば、「メガバンクをどのようにコングロマリット化するか」「地域金融機関をどうやって維持して、中小企業を生き永らえさせるか」ということに尽きている。しかし、もし「金融立国」の意味するものが「東京を世界に冠たる金融市場のひとつにする」というものであるならば、明らかに方向性が違っている。

国際金融市場の2つの条件

 そういう国際市場であるための条件は2つある。ひとつは市場参加者の多様性、もうひとつは十分な投資家保護である。

 市場参加者の多様性とは、国籍や金融機能の差別なく、皆に開かれたマーケットであるということだ。もっと分かりやすく言えば、邦銀、特にメガバンクを太らせるという政策ではなく、証券・独立系PEファンド・ノンバンクなど、世界の多種多様な市場参加者が競って東京に拠点を構え、人を雇い、企業の資金調達を仲介することによって、アジアの橋頭堡として東京が世界に認められることなのだ。

 しかし現実は、近年、多くの外資系金融機関がアジアのヘッドオフィスを香港やシンガポールに移転し、東京では多くの人員解雇が起きている。東京はアジアのローカルマーケットになってしまっているのが現実であるにもかかわらず、これに対する危機感が、政治や官庁に共有されているとは到底思われない。事実上の世界共通言語である英語への取り組み、香港やシンガポールと比べた税制面での劣後、そして何よりも当局の姿勢が、こうした状況を生んでいるのではないだろうか。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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