生命保険会社が乗合代理店に支払う販売手数料をめぐって、金融庁が抜本的な規定の見直しを求める中、業界内でまたぞろ暗闘が繰り広げられている。(週刊ダイヤモンド編集部 中村正毅)

オリックス生命が金融庁のルールに抵触かPhoto:PIXTA

「比較推奨の趣旨を、あの会社は本当に理解しているのか」

 大手生保の役員がそう言ってやり玉に挙げ、騒動の渦中に巻き込まれていったのは、医療保険に強い業界中堅のオリックス生命保険だった。

 問題となったのは、同社が乗合代理店に対して配布した資料にある「1社推奨加算」という項目。今年10月以降、オリックス生命だけを推奨するかたちで顧客に提案した場合には、手数料を上乗せするという内容が書かれていたのだ。

 そもそも、複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店に対しては、金融庁が「手数料水準の高い商品に誘導するために、商品の絞り込みや提示・推奨を行うことのないよう留意する」と、比較推奨のルールをわざわざ監督指針の中で示し、顧客本位の取り組みを事あるごとに求めてきた経緯がある。

 にもかかわらず、保険会社が手数料をちらつかせながら、自社だけを推奨するように乗合代理店に働きかけるのは「比較推奨のプロセスを歪める」(金融庁幹部)ことになりかねない。