テクノロジーの進化でさらなる激変期に突入したメディア業界の最前線を追う本連載。第9回では、特集でも掲載した「読者"愛着度"ランキングーPC版ーベスト50」と「滞在時間ランキング【完全版】をお届けする。米インターネット利用動向調査会社であるcomScore,Inc.のデータを用いて作成した、週刊ダイヤモンド完全オリジナルのランキングである。

ページビュー(PV)は多ければ多いほどよい──。最近まで日本のメディアにまん延していたそんな空気が徐々に変わりつつある。

 PVに代わって注目されているのがエンゲージメント、つまりメディアに対する愛着度を重視する考えだ。具体的には、「いかにそのウェブサイトに長く滞在したか」や「いかに高頻度でそのサイトを訪れたか」などを指す。

 できるだけ多くのPVを稼ぎ、それに応じて得られる広告収入に依存したビジネスモデルでは、いずれ限界が訪れる。そこで多くのメディアが生き残りの鍵と捉えているのが、デジタル有料購読(サブスクリプション)モデルだ。

 サブスクで成功するには、多くの読者から、高いエンゲージメントを得ていることが不可欠だ。毎日のように、何度もサイトを訪れて記事を読みたいと思わせることができなければ、サブスク読者の獲得は到底できないからだ。

 本誌は読者規模と、エンゲージメントに関する四つの観点(滞在時間、習慣性、回遊性、訪問頻度)の合計五つを重視。インターネットの利用動向を調査する米コムスコア社の協力を得て、「読者“愛着度”ランキング」を作成した。

 コムスコア社はネット利用動向調査会社として世界トップクラスのシェアを誇る。ただ、日本ではメディア側が自己申告した媒体データを利用するケースが多いため、あまり普及していない。

 これに対し、コムスコア社アジアパシフィック・シニアバイスプレジデント、ジョー・ニューヤン氏は、「ウェブマーケティングをする多くの企業は、メディアがデータを“盛っている”ことを見抜いている。企業はより透明性の高いデータを欲しており、コムスコアのデータを使いたいというニーズは増えている」と指摘する。

 一部のグローバル企業は実際、同社など第三者機関のデータがなければ広告出稿の判断はしない方針を打ち出している。

 コムスコア社の調査方法は、ネットの利用動向に協力する調査対象者(パネル)から、直接データを収集し、拡大推計する方法だ。日本にはパソコンでの利用データを収集するために約3万人のパネルを抱えている。

 地上波テレビの視聴率調査を手掛けるビデオリサーチも、家庭のテレビでの実際の視聴動向を調べ、それを拡大推計している。コムスコアの調査もそれに似ており、“テレビ視聴率調査のウェブ版”というと分かりやすいだろう。

 日本ではすでにスマートフォンなどモバイルからのアクセスがパソコンからのアクセスを上回っているが、同社は日本におけるモバイル利用者のパネルが未整備であるため、ランキングはパソコンでのアクセスデータに限定されている点を付記しておく。