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 10月は乳がん啓発のピンクリボン運動期間で、街中にピンク色が溢れていた。

 期間中は、早期発見のみが注目されがちだが、近年は就労支援や生活指導など「その後」の毎日を支える動きが盛んになっている。

 実際、乳がんの10年生存率はステージⅠの早期がんで95.4%、全体でも82.8%と高い(今年2月28日の国立がん研究センター公表資料より)。治療後にサバイバー(経験者・生存者)としての長い生活が始まるのだ。

 日々の生活では食事が大切だ。日本乳癌学会の「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」によると、食べ物と乳がん再発リスクとの関係は、まだ明らかではない。しかし、肥満が再発・死亡リスクであることは「ほぼ確実」で、診断後に体重が5キログラム以上増加すると、乳がん死亡リスクがおよそ1.6倍上昇する。

 また、肥満は乳がん死ではなく心血管死のリスクでもある。ことにホルモン療法中は薬の影響で体重が増えがちなこともあり、乳がんサバイバーはまず、食事の質に気をつけたい。

 今年9月、補完代替療法の専門誌に掲載された総括レビューを一部抜粋すると、診断された後は、
(1)エストロゲン受容体陽性乳がん、あるいは閉経後に乳がんと診断された女性は、炭水化物(糖質)の摂取量を抑えること。
(2)夕食から朝食までの時間を最低13時間空ける“プチ断食”で再発リスクを低減できる可能性がある。
(3)タモキシフェンを服用中の人はブロッコリー、ケールなどアブラナ科の野菜、適量のコーヒーを意識して取る。
(4)アルコールは再発リスクを上昇させるので、控えること。
(5)大豆製品を食べることで、再発リスクが下がる可能性がある。ただし、サプリメント等で大量に摂取する必要はない。

 食事以外では抗がん剤治療中でも有酸素運動と筋トレ、あるいはヨガなどで身体を動かすことが推奨されている。副作用の関節痛やむくみには指圧も有効だ。

 「病人として」ではなく、できるだけ普通に生活することが生存率を上げる秘訣かもしれない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)