警備輸送大手銀行以外からも警備輸送のニーズが拡大中。訪日外国人が急増する地域では、ATMの現金補充や障害対応の依頼が増えている

 物流各社の2018年上期決算が軒並み好調だ。ヤマトホールディングスやSGホールディングスは、宅配便の平均単価を前年同期に比べて20%弱も改善。自然災害多発によるマイナス影響をも吸収する「値上げ効果」が表れた。

 業界最大手の日本通運も増収増益を確保。値上げ効果を通期で80億円とみていたが、上期で55億円を達成したため120億円に引き上げたほどだ。

 ところが同社の警備輸送事業だけは事情が異なる。警備輸送は現金などの貴重品を運ぶ業務で、防護ベストを着たガードマンが銀行の店舗間や駅、コンビニエンスストアのATMから現金を運んだりするものだ。今上期に同事業の売上高は350億円強と前年並みを維持したが、営業利益は3億円弱と前年同期比で7割も減った。

 大幅減益の理由は「主要顧客である銀行がゼロ金利政策の影響で業績が厳しく、値下げ要請が来ているからだ」と関係者は明かす。他の業界からは値上げに理解を得られたのに、銀行だけは「逆」だ。

 警備輸送は現場業務を下請けに出しておらず、自社戦力。人件費を含む固定費が他事業に比べて高いのも利益を押し下げる要因となっている。日通は警備業法の有資格者を含む警備員を約7000人抱えており、自社戦力による「高品質重視」は今後も継続する方針。値下げに応じてでも売り上げを確保し、人件費に充てるわけだ。