ヤマト運輸の週休4日容認で考える、時短勤務の「幸せ」「不幸せ」今年9月、ヤマト運輸が一定の条件を満たす従業員に対して、週休4日を選べる制度を導入した。この試みからは、企業が考えるべき働き方改革の教訓が読み取れる Photo:DOL

ヤマト運輸が週休4日容認
に踏み切れた社内体制とは

 少し前のニュースだが、今年9月、ヤマト運輸がフルタイム勤務で1年以上在籍している従業員に対して、週休4日を選ぶことができる制度を導入した。この制度の狙いは、育児や介護など家庭の事情でフルタイム勤務が難しくなった社員や、50歳以上の従業員で体力の低下により従来の勤務スタイルの継続が難しくなった人が利用できるという。

 実は私も以前、ある大企業で同様の制度を導入するためのコンサルティングを請け負ったことがある。そのときは週休4日ではなく、週5日勤務の時短制度を導入することが目的だったのだが、そのときの経験を基に今回のヤマト運輸の制度について、働き方改革の観点から解説してみたいと思う。

 まず、ヤマト運輸が発表した具体的な時短勤務の新制度だが、前述の条件に該当する従業員に関して、これまでのように通常勤務(年248日)に加えて、2018年9月16日以降は週休3日(年208日)や週休4日(年156日)の勤務形態が選べるようになった。また、1日あたりの労働時間についても4、5、6、7、8時間のいずれかから選ぶことができる。

 たとえば、自宅近くの保育園に幼児を預けてから出社し、夕方18時には子どもを引き取りに行かなければいけないような従業員でも、10時から17時まで、昼の休憩を抜いて6時間勤務を選択すれば、子どもが小さくても無理なく仕事をこなすことができる。

 また定年が近くなって、身体に無理を感じるようになった一方で、親から引き継いだアパート経営で一定の家賃収入が入ってくるといった家庭の事情がある従業員の場合、週休4日を選択して、1年のうち156日だけ働き200日は休日にすることで、十分な休養をとりながらこれまで同様の業務を無理のない範囲でこなすことができる。

 この制度は会社の側から見れば、出産や高齢、家族の介護の負担などを理由に、それまで戦力だった従業員が会社を辞めてしまうといった雇用損失を防ぐことができるという意味で、利益につながる制度と言える。

 特に、人手不足が最大の経営課題となる企業が増えているなかで、どの企業にとっても課題解決につながる制度のはずだ。では、なぜこのような制度が広まらないのか。そこには理由がある。このような勤務スタイルを導入するためには、企業の側に準備すべき条件があるのだ。