日本銀行のホームページを開くと、一番上に小さなフォントで、次の一文が記載されているのが見える。

a日本銀行のホームページを開くと出てくるトップページ。その最上部には、日本銀行が目指す二つの目的が記されている Photo by Takahisa Suzuki

「日本銀行は、物価の安定と金融システムの安定を目的とする、日本の中央銀行です」

 この目的二つのバランスの取り方が難しくなっている。黒田東彦総裁率いる日銀は、2年程度でインフレ目標(年率2%)を達成すると宣言して、2013年春に「異次元金融緩和策」を開始した。しかし、それから5年半たっても目標達成は全く見えてこない。当初は「短期決戦」のつもりで始めた同政策だったが、「持久戦」と化してしまった。いや、「籠城戦」と呼ぶ方が適切かもしれない。

 今年7月に日銀は、先行きのインフレの予想を引き下げつつ、現行の金利水準(短期金利はマイナス、10年金利はゼロ%程度)を当分の間続けると宣言した。物価を押し上げるための有効な追加緩和手段はすでに尽きた。しかし、インフレ目標を諦める「白旗」は上げたくない。このため、現行の政策を粘り強く続けることだけが、今の日銀にとって唯一の戦略となってしまっている。

 だが、もともと短期で終了することを前提としていた政策故に、それが長期化するとさまざまな副作用が噴出してくる。「官製相場」の長期化による債券市場などの機能不全がその一つだ。

 これに関して日銀は7月に、10年金利の変動幅拡大や国債買いオペの柔軟化によって副作用をいくらか和らげようとしている。しかし、例えば「劇薬」の長期大量投与によって皮膚に炎症が生じたとき、それに軟こうを塗ったところで効果は限られる。本質的には「劇薬」の投与を停止しなければ、副作用は鎮まらない。