プロレスは戦後、アメリカから日本に伝わったエンターテインメントだが、いまアメリカでは「新日本プロレス」が人気だという。これまでグレートムタやTAJIRI、中邑真輔など、海外で成功を収めた日本のレスラーは多くいたが、日本のプロレス団体そのものが映像コンテンツとして話題になったのは初めてのことだろう。人気の理由についてプロレス評論家の斎藤文彦氏に聞いた。(清談社 岡田光雄)

観客の6分の1が海外のファン
アジアからはプロレス巡礼も

暗黒期を経て人気が復活してきた新日本プロレス2000年代初頭の暗黒期を経て復活し、今や国内のみならず海外のファンも増えている新日本プロレス。プロレス観戦に言葉の壁はないようだ 写真:日刊スポーツ/アフロ

“プロレスラーってガチの格闘家相手だと弱いんだな”
“アマチュアのレスリング選手のほうが断然強いでしょ”
“プロレスなんて結局、全部八百長だろ”

 2000年代初頭、新日本プロレスは暗黒期だった。当時、PRIDEやK-1などの格闘技が盛り上がりを見せる中、総合格闘技のリングに上がったプロレスラーたちがことごとく惨敗。それ以降、20世紀のプロレスの最強神話は崩れ、業界の雄だった新日本プロレスも観客数が激減した。

 その後、創業者のアントニオ猪木が保有していた新日本プロレスの株式は、2005年にゲーム会社のユークス、12年にはカードゲーム会社のブシロードに売却される。ここでさまざまな改革(会計や広告宣伝の見直しなど)が断行され、棚橋弘至、中邑真輔、オカダ・カズチカといった新しい世代のスーパースターの出現もあり、徐々に経営は再建されていった。

 こうした理由によって、新日本プロレスの2018年7月期の売上高は約50億円と過去最高を記録。年間の観客動員数は40万人以上に上り、近年は、海外のプロレスファンも新日本プロレスに高い関心を示しているのだ。

「今年1月4日に開催された新日本プロレスの東京ドーム大会(毎年開催)は、3万8000人の観客のうち6000人ほどが外国からのツアー客でした。一番多いのはアメリカでしょうが、私の後ろの席ではロシア語が聞こえていました。その他にもオーストラリア、イギリス、イタリア、ブラジル、中にはモロッコから来たという熱狂的なファンも。あるいは、香港、シンガポール、台湾などアジア圏からのファンも大勢いました」(斎藤文彦氏、以下同)

 斎藤氏によれば、主にアジアのプロレスファンの間では、年末年始に日本にプロレスを見に行くことがカルチャーになりつつあるという。