ギリシャ危機はスペインに飛び火した。金融危機の再燃が危ぶまれる。G7の財務相は急遽、電話会議を開き対応に躍起だが、市場の動揺は収まらない。17日のギリシャ再選挙で、「緊縮財政拒否」を主張する急進左翼連合が第1党を取りかねない情勢だ。左派が勝利すれば「ギリシャのユーロ離脱」が現実味を帯びる、といわれる。しかし、その選択はあり得ない、と思う。

 離脱して困るのはギリシャである。一方EUは、ギリシャをユーロから追い出した時の混乱を恐れる。スペインに飛び火した危機が、手荒なまねができない状況を印象付けた。EUもギリシャにも「離脱カード」を引く蛮勇はない。

無垢な野党ほど
政権につくとブレが大きい

 急進左翼連合のチプラス党首は第2党に躍り出た総選挙の後、フランスとドイツを回り「ギリシャ国民は、全てのヨーロッパ人のために戦っている」と気勢をあげた。緊縮財政の押しつけは、新自由主義の手法を欧州に持ち込むもので、ギリシャを人道的危機に陥れるものだ、と訴えた。

 増税、年金カット、公務員の削減など「痛みを伴う調整政策」を有無を言わさず押し付けるEU委員会の姿勢は、アジア危機の時に乗り込んだIMFの傲慢さを思い出させる。上から目線で「お前らがしっかりしないから、こんなことになったんだ」と言っているような印象を国民に与えた。

 野党の立場にあるなら、この妥協なき姿勢は評価される。政権を担うとなると、話は別である。ギリシャ国民が「我々が何をしたというのだ。政治家の不始末で国民が痛い目にあうなど理に合わない」と怒る気持ちはよくわかる。この怒りが急進左派を躍進させた。旧政権から遠いところにいた政党であり「緊縮財政反対」を掲げ、現状へ異議申し立が鮮明だった。

 1994年に、日本で社会党の村山富市首相が誕生した時を振り返れば、よくわかる。自衛隊を認め、消費税の引き上げを決めた。無垢な野党ほど、政権につくとブレが大きい。