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山田厚史の「世界かわら版」

ユーロは今やチキンレース
だが、誰も引けないギリシャ離脱カード

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第11回】 2012年6月7日
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 ギリシャ危機はスペインに飛び火した。金融危機の再燃が危ぶまれる。G7の財務相は急遽、電話会議を開き対応に躍起だが、市場の動揺は収まらない。17日のギリシャ再選挙で、「緊縮財政拒否」を主張する急進左翼連合が第1党を取りかねない情勢だ。左派が勝利すれば「ギリシャのユーロ離脱」が現実味を帯びる、といわれる。しかし、その選択はあり得ない、と思う。

 離脱して困るのはギリシャである。一方EUは、ギリシャをユーロから追い出した時の混乱を恐れる。スペインに飛び火した危機が、手荒なまねができない状況を印象付けた。EUもギリシャにも「離脱カード」を引く蛮勇はない。

無垢な野党ほど
政権につくとブレが大きい

 急進左翼連合のチプラス党首は第2党に躍り出た総選挙の後、フランスとドイツを回り「ギリシャ国民は、全てのヨーロッパ人のために戦っている」と気勢をあげた。緊縮財政の押しつけは、新自由主義の手法を欧州に持ち込むもので、ギリシャを人道的危機に陥れるものだ、と訴えた。

 増税、年金カット、公務員の削減など「痛みを伴う調整政策」を有無を言わさず押し付けるEU委員会の姿勢は、アジア危機の時に乗り込んだIMFの傲慢さを思い出させる。上から目線で「お前らがしっかりしないから、こんなことになったんだ」と言っているような印象を国民に与えた。

 野党の立場にあるなら、この妥協なき姿勢は評価される。政権を担うとなると、話は別である。ギリシャ国民が「我々が何をしたというのだ。政治家の不始末で国民が痛い目にあうなど理に合わない」と怒る気持ちはよくわかる。この怒りが急進左派を躍進させた。旧政権から遠いところにいた政党であり「緊縮財政反対」を掲げ、現状へ異議申し立が鮮明だった。

 1994年に、日本で社会党の村山富市首相が誕生した時を振り返れば、よくわかる。自衛隊を認め、消費税の引き上げを決めた。無垢な野党ほど、政権につくとブレが大きい。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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