この他にもクロブシャー議員は、巨大企業の合併については、審査にかかる費用を引き上げる提案などを行っている。ウォーレン議員のように、すでにある巨大な企業の分割を派手に提示するだけでなく、合併による新たな寡占・独占企業の誕生を、着実に阻止しようとする意図がうかがえる。

制度改正を待たずに
企業行動には変化も

 もちろん、いくら民主党の候補者が力を入れたとしても、反トラスト法の修正などによる大規模な方針転換が実現するまでには、相当の時間がかかる。2020年の大統領選挙でトランプ大統領が敗れるとしても、新しい政権が動き出すのは2021年になってからだ。また、たとえ民主党の大統領になったとしても、党派対立が厳しい議会をまとめあげ、法改正を実現するのは簡単ではない。

 それでも、こうした議論の高まりが、米国企業の動向をじわりと変えていく可能性は見逃せない。2019年3月にアマゾンは、米国における同社のプラットフォームに出品している事業者に対して、同じ製品の外部サイトでの安価な販売を禁止した契約条項の適用を取りやめたことを認めた。すでに欧州では6年前に廃止されていた条項だが、米国でも独占的な地位を利用した行動が政治問題化してきたために、ついにアマゾンの態度が変わったと言われる。

 同じく3月にフェイスブックが、悪質な投稿やプライバシーなどの観点について、規制強化の必要性を主張する姿勢に転じたのも、独占的立場への警戒の高まりに先手を打ち、自社に無理のない方向に規制改革の議論を導こうとする狙いが透けて見える。

 大統領選挙の投票日(2020年11月3日)までには1年半以上あるが、早くも2019年6月には、民主党の候補者による最初のテレビ討論会が、フロリダ州マイアミで実施される。左傾化が指摘され、トランプ大統領から「社会主義」と批判される民主党にとって、反トラスト法の強化には、「市場に競争を取り戻す」という大義名分が立ちやすい面がある。議論の活発化が予想されるなかで、企業は試行錯誤を迫られそうだ。