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山田厚史の「世界かわら版」

ギリシャ国民が示した絶妙のバランス
決断のボールはドイツの手に渡った

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第12回】 2012年6月21日
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 ギリシャのやり直し総選挙で、与党・新民主主義党(ND)が僅差で急進左派連合を抑えた。「緊縮財政派」が過半数の議席を確保する見通しとなり、「ユーロ離脱」はひとまず遠のいた。

 ほっとしているのは急進左派連合のチプラス党首も例外ではないだろう。「緊縮財政反対」を声高に叫ぶことは野党だからできる。

ギリシャ国民は再選挙で
絶妙のバランスをとった

 危機は一服したが、ギリシャは果たしてユーロに、留まり続けることができるのだろうか。選挙結果は、その選択がギリシャからドイツへ委ねられたことを示している。

 急進左派連合が政権をとっていたらどうなっただろう。緊縮財政に反対しても、各国の支援がなければ国家の破綻は回避できない。留まるにせよ、離脱するにせよ、EU委員会や他国との交渉が必要になる。折り合いをつける「妥協」も避けられない。ギリシャの銀行から預金が流出する現状を考えれば、預金封鎖など国民に隠れた極秘作戦が必要になる局面も生じかねない。急進左派連合にそんな芸当はできないだろう。

 急進左派連合はどう財政危機を回避するか、いかにギリシャ経済を立て直し失業者を減らすのか、という根本問題への方策を総選挙でも示していない。毛沢東主義から環境保護まで幅広い「反政府勢力」の寄り合い所帯で、統一した政策綱領は不明だ。数年前まで野党でも少数勢力だった。蔓延する失業や世襲がはびこる政界へのうっ憤をバネに、躍進した政党だ。

 チプラス党首は37歳、オートバイで議会に乗り付けるイケメン議員で、民衆の中に入り、歯切れのいい発言で政治不信を取り込んだ。だが現実への対応は、歯切れよく進めないのがギリシャの現状だ。緊縮財政を蹴って、ユーロから離脱すれば、ギリシャは大混乱になる。ユーロがヤミで流通する破綻国家になりかねない。

 「反対」を高らかに叫ぶアジテーターの持ち味は「野党」だからこそ魅力的なのだ。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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