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 中国ではリスクの高い借り手が苦境に陥るケースが増え、同国のシャドーバンキング(影の銀行)の重要な一角を担う信託会社を圧迫しつつある。

 懸念されるのは、民間企業のための資金調達手段がさらに狭まり、すでに減速傾向にある同国経済の足を引っ張りかねないことだ。民間企業は規制の緩い信託会社を頼みの綱としている。既存の銀行は、何かと優遇される国有企業を主に相手にしているからだ。一方で、大勢の小口投資家にも影響が跳ね返る可能性がある。

 中国信託業協会およびムーディーズ・インベスターズ・サービスのデータによると、中国には3月時点で信託会社が68社あり、資産総額は22兆5000億元(約355兆円)。貸出資産は中国の銀行資産総額の2.9%に相当する。

 信託会社は一般に、アパートや工場、高速道路の建設といったプロジェクトに資金を貸し出している。ローン債権を組成したファンドは、標準的な銀行預金よりも高い利回りを約束する投資商品となっている。

 こうした信託ファンドは上場されておらず、債券投資のような性質をもつ。企業や金融機関、富裕層などから資金を集め、定期的に決まった額を支払う。通常6カ月~5年で満期を迎え、投資家は元本を回収する。株式など他の投資を組み入れた信託ファンドもある。

 一方、信託会社から資金を借り入れた企業の一部は、住宅市場の冷え込みや景気減速で苦境に陥っている。ムーディーズによると3月時点で「債務不履行(デフォルト)および返済リスク」を抱える信託資産は2800億元余りとなった。