「依存症ビジネス」のからくりから
身を守るための3つのポイント

 本書の著者アダム・オルターは、新進気鋭の心理学者で、マーケティング、意思決定、行動経済学の専門家。つまり、人間がどのように考え、行動するかのスペシャリストであるだけでなく、企業側の「やり口」にも精通している人物だ。また、ダニエル・ピンク、マルコム・グラッドウェル、チャールズ・デュヒッグ、スーザン・ケインなど、錚々たる面々が次世代の心理学者のスターと目する研究者でもある。

 そのオルターが考える「依存症ビジネス」への対抗策は、次の3点に集約される。

1)心理的なメカニズムだけではなく、社会的な要因を知る
 いわく、かつての依存症は「物質」への依存であり、いま台頭しているのは「行動」への依存であるという。どのような経緯、メカニズムで依存症が社会的な病、現象となったのかを的確に見抜くことが重要となる(同書第1部)。

2)依存症ビジネスが使う「のめり込ませる技術」を知る
 オルターは、依存症ビジネスが使う、人をのめり込ませる6つのテクニックについて解説する(同書第2部)。

 第1に、ちょっと手を伸ばせば届きそうな魅力的な目標があること(第4章「目標」)。
 第2に、抵抗しづらく、また予測できないランダムな頻度で、報われる感覚(正のフィードバック)があること(第5章「フィードバック」)。
 第3に、段階的に進歩・向上していく感覚があること(第6章「進歩の実感」)。
 第4に、徐々に難易度を増していくタスクがあること(第7章「難易度のエスカレート」)。
 第5に、解消したいが解消されていない緊張感があること(第8章「クリフハンガー」)。
 そして第6に、強い社会的な結びつきがあること(第9章「社会的相互作用」)。(同xiiページ)

 これを使えばそういう製品やサービスが作れてしまうという意味では、まさに「悪用厳禁」である。

3)ソリューションを知る
 オルターは、もはや文化にまで侵食している「依存症を推奨する社会」とどう折り合うかにも焦点を当てており、そのための行動指針、ソリューションが、3つ語られる(同書第3部)。いずれも現実に行動に移せるものが多く、ノウハウとしても有効だ。そのソリューションについては、ぜひ、本書で確認してほしい。

 新しい時代の「依存症」が台頭するなか、オルターが書き上げた3部構成の『僕らはそれに抵抗できない』。本書に対する『ハフィントンポスト(現ハフポスト)』創設者アリアナ・ハフィントンのコメントを引用して、本稿を締めくくりたい。

「メールチェック、ウェブサーフィン、『いいね』のタップがやめられないあなたは、ぜひデバイスからいったん手を放して、この本を読んでください。現代人がテクノロジーに依存する理由、そうなった経緯、そしてこれからとるべき対策について語った大切で画期的な1冊です」