時には「つながり」を拒否し、
「自分モード」の確立を!

佐宗 そうやって「つながってしまった世界」が加速する流れのなかで、ネットワーク科学の研究者としての佐山さんは、日々どういうことに気をつけていらっしゃいますか?

佐山 これを言うとびっくりされるのですが、私はスマホを持っていないんですよ。それが1つの回答になるかと思います。「常時つながっている世界」というのは絶対によくありません。「つながったり、つながなかったり」を自分で選択できるほうがいい。スマホというのはそうした選択肢を私たちから奪って、有無を言わせずにつながってしまう。

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「いや、自分は好きな人とだけつながっているんだ」と反論される方もいるかもしれませんが、「好きな人とつながる」というのは、フェイスブックなどの思惑なんです。好きな人同士のネットワークというのは、広告効率がよくなることがわかっていますから、彼らのビジネスの思惑どおりに、私たちは都合よくマネタイズされているわけです。
たとえば、昔の地域社会などであれば、新聞が1、2紙あるくらいで、しかも同じような情報しか手に入りませんでした。だからこそ、人々は情報を求めて能動的につながろうとし、ネットワークが広くなっていったわけです。しかし今はそうではありません。

佐宗 放っておくと、決められたつながりのなかにとじこめられてしまう、と。

佐山 そうなんです。ですから、情報のソースをなるべく多様化し、つながるかつながらないかを個人が能動的に切り替えられるようにすることがすごく大事だと思います。

佐宗 グーグル検索だってそうですよね。僕たちは検索によって有益な情報を得ているように錯覚していますが、じつは、自分の時間を提供することで、検索結果データという巨大な畑をグーグルの代わりに「耕している」にすぎない。極言すれば、僕たちはグーグルの「小作農」になっているわけで、自分たちの労働によって「分け前」をもらっている。それがいまの状況です。そしてこれからは、このような「つながり」の世界から自分自身を引き離そうとする「自立」の動きが起きてくるだろうなと思います。

佐山 絶対起こるでしょうね。

佐宗 世の中には潜在的に「つながりすぎて気持ち悪い」という生理的な感覚が広がっていると思います。マインドフルネスが流行したのも、単に「気持ちがいい」とか「頭がスッキリする」とかいったベネフィット以前に、この「つながってしまった世界」から自分を引き離したいという感覚があるでしょうし、「自分モード」の大切さを提唱した『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』が支持されたのにも、きっとそういう背景があるのだろうなと感じています。この分野は今後とも深掘りしていきたいと思っています。本当に貴重なお話をありがとうございました!

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(対談おわり)