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今週のキーワード 真壁昭夫

にわかに暗雲が立ち込め始めた
「日本版金融危機」の現実度

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第52回】 2008年11月4日
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 世界的な金融危機に対する懸念が深まるなか、つい最近まで、わが国の金融機関については、「痛手は軽いから心配は要らない。むしろ、バブル崩壊後のわが国の不良債権の経験を生かすべき」という楽観的な認識が一般的だった。

 ところが、世界的に株価が大きく下落し、実体経済の一段の悪化が現実味を帯びてくると、さすがに「日本の金融機関は安心」とばかりは言っていられない状況になりつつある。

 わが国の有力証券会社のなかには、金融市場の混乱の影響をまともに受けて、今年に入ってから四半期の収益が連続してマイナスに落ち込むところが出ている。中堅生保である大和生命や、REIT(不動産投信)を運営する投資法人が破綻に追い込まれるケースも発生した。

 経営状況が悪化した米系投資銀行などへ多額の出資を行なったわが国の金融機関のなかにも、資本を充実させるために多額の株式発行増資を行なうところが目立ち始めている。こういう事態を嫌気して、株式市場が急落する局面も発生している。

 さらに、株価急落や景気の後退は、中小の銀行や生命保険会社の経営を直撃している。ある試算によると、日経平均株価が7000円程度まで下落すると、124行の全国銀行のうち、20行近い銀行が債務超過になるという。

金融危機でチャンスと打撃を
もらった大手金融機関

 現在のところ、実際に破綻に至った銀行はないものの、すでに市場関係者の間では、いくつかの金融機関の「破綻懸念」に対する観測が飛び交っているという。

 政府は、こうした事態に対処するために、銀行への資本注入も含めた「金融安定化」の方策を示したものの、その効果については未知数な部分が多い。今後、景気の後退が一段と鮮明化すれば、地方の中小金融機関を中心に、実質的な破綻に追い込まれるケースも出てくるはずだ。

 世界的な金融危機は、わが国にとって決して“対岸の火事”では済まされないのである。

 振り返れば、1990年代中盤以降、日本の金融機関は厳しい“冬の時代”を過ごした。償却しても償却しても、後から後から不良債権が増加するという状態が続いた。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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