ベストセラーとなったレバレッジシリーズなどで知られる本田直之氏と、映像で世界平和の実現を志す社会起業家・関根健次氏による、「本当の幸せとは何か?」をテーマにした特別対談の後編。前編では、「幸せを感じるのは“スキル”である」という新しい気づきを与えてくれた2人が、後編では何を語るのか? 豊かであるにもかかわらず、なかなか幸せを感じられない私たち日本人に、「自由に、そして幸せに生きるためのヒント」を教えてくれた。
(取材/構成/執筆/撮影:ダイヤモンド社 出版編集部 宮田和美)
選択できることは、
とても幸せなこと
関根 幸せを感じるためには、いまあるものに感謝できる「ポジティブな思考」は不可欠ですが、もうひとつ、「選択ができる」という環境があることも大切だと思います。選択ができるというのは、今日行くところを選べたり、食べるものを選べたり、仕事を選べたりとかいうこと。そうしたことを自分自身で自由に選ぶことができる環境を持っていることです。
と思うのは、僕は学生時代、パレスチナのガザ地区という、紛争が半世紀以上続く場所に行った経験からです。そこに暮らす人たちは、そうした当たり前のことを選ぶことができない。そもそも街自体が封鎖されていて、生活空間も制限されている。まともに移動をすることすらできません。そんな中で彼らの最低限のニーズというのは「平和」なんです。とにかく「安心して生きられる平和な社会がほしい」ということ。失業率も80%近くあるような環境の中で、「家族が生きていくための仕事がある」というのが、絶対的幸福のベースになっています。
こうした過酷な状況下にあるガザ地区で一番驚いたのは、明日の生活さえわからない貧しい人が多いというのに、みんな子だくさんだということ。そんな彼らに共通していたのは、「親戚や地域の人が助けてくれる」という言葉。そもそもこの地域では「子どもは宝と一緒に生まれてくる」といわれていて、まさに「子宝」。だから子どもはたくさんいたほうがいいという考えなんです。日本のように、お金がかかるから子どもは増やせないというのとは反対に、ガザ地区では、たとえ自分にお金がなくてもコミュニティが支えてくれるという安心感があるんです。だから子だくさんになれる。これはちょっとびっくりしましたね。
こうした「支えあいのシステム」は、イスラム教徒の特徴でもあり、イスラム社会の掟でもあります。年収の2.5%を社会のために寄付しなければならない「サガード」という宗教的な決まりがあるんです。そうした宗教的な背景が、コミュニティの中に支えあいの文化を生んでいます。政治的経済的な一面だけで切り取ると大変過酷な状況にある彼らですが、家族、コミュニティといった幸せは、日本よりもはるかに大きいと感じました。