旬を楽しみ、身体が喜ぶ 江戸料理
【第26回】 2012年7月20日 車 浮代

奈良時代から、夏バテ予防食だった「鰻」
諸説入り乱れる蒲焼きの変遷

 この夏は、猛暑の上に節電対策の強化で、体調の自己管理が必要となってきます。

 できるだけ強い日射しを避け、水分と塩分、体力を回復させる食事をきちんと摂ることが大切です。

 日本では、新石器時代から食べられていたと言われる鰻ですが、“夏バテ防止に鰻を食べる”という習慣は、奈良時代にはすでに確立されていました。

 『万葉集』の中で大伴家持が、

「石麻呂に 我物申す夏痩せに 良しといふものぞ 鰻捕り喫《め》せ」

と詠んでいるのがその証拠で、家持が、夏痩せした石麻呂(吉田連老)に「鰻を食べるといいですよ」とアドバイスした、というのですから現在と状況は変わりません。

うざく
【材料】鰻の蒲焼き…1/2枚/きゅうり…1本/茗荷…2個/わかめ…適量/酢…大さじ1/砂糖…小さじ1/2/醤油…大さじ1/2/水…大さじ1/おろし生姜…少々
※具は鰻ときゅうりだけでも構いません
【作り方】 ①蒲焼は1cm幅に切り、きゅうりと茗荷は千切りに、わかめは戻して適当なサイズに切り、すべて器に盛る。②酢、砂糖、醤油、水を混ぜ合わせ、1にかけて冷蔵庫で冷やし、食べる直前におろし生姜を乗せる。

 ただしこの頃の鰻の食べ方は、筒状にぶつ切りにした鰻の真ん中に串を通して火で炙り、荒塩やたまり醤油、山椒味噌などをつけて食べるというものでした。

 想像するとグロテスクですが、この形状が蒲の穂に似ていることから、鰻の串焼きは「蒲焼」と呼ばれるようになったのだと、幕末に書かれた江戸の百科事典、『守貞謾稿』にあります。

 ただしこれには別の説があって、焼いた鰻の色が樺の皮に似ているから「樺焼」と呼ばれたというものや、『守貞漫稿』より数十年早い時期に山東京伝が書いた『骨董集』では、香りが疾《はや》く人の鼻に届くから「香疾《かばやき》」と呼ばれたのが当て字になった、とあり、判断に悩むところです。 

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旬を楽しみ、身体が喜ぶ 江戸料理

栄養価の高い旬の食材を、あまり手を加えずにいただく――。これが江戸料理の醍醐味であり、健康長寿につながる正しい食のあり方だと思います。このコラムでは、江戸料理と健康をテーマに、食材ごとの情報とレシピをご紹介していきます。

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