スマートフォンなど携帯端末の普及とSNS利用の広がりは、小売業の顧客接点の持ち方を大きく変えている。デジタル分野、リアル分野をシームレスにつないで真に顧客に求められる商品を提供する「オムニチャネル」の時代が本格化しつつあるなか、これからの企業に求められるマーケティングの手法とは何か。オムニチャネル・リテイリングの先駆者が最新事例とともに解説する。

顧客情報を「なにもかも」
統合する「オムニチャネル」

「オムニチャネル(Omni Channel)」という言葉がにわかに広がりを持ってきた。

 企業が消費者といかに多くの接点を持つかというテーマに対し、「マルチチャネル」「クロスチャネル」が叫ばれて10年以上が経過したが、生活者のスタイルが変わるなか、小売業もオムニチャネルに対応しなければならなくなってきた。

 実は「オムニチャネル」という言葉自体は、そんなに新しいものではなく、数年前から一部のコンサルティングファーム等で語られている。オムニチャネルの「オムニ(OMNI)」とは、一般的には「すべて」という意味であるが、筆者は「なにもかも」という言葉をあてはめることが多い。

 最近では、「オムニチャネル」という言葉自体は、従来からいわれてきた「マルチチャネル」や「クロスチャネル」と対比させて使用されるようになったが、にわかに脚光を浴びてきたのは、2011年1月、全米小売業協会(National Retail Federation, 略称NRF)の標準化団体であるARTS(The Association for Retail Technology Standards )が、「Mobile Retailing Blueprint V2.0」を発表してからだ。

 これらは、モバイル・コマース(スマートフォン、タブレットPC等の携帯端末を利用したコマース)を実践する上での、さまざまな領域での標準化を目指したものであり、携帯端末を利用した実店舗とネット(Eコマース)間での情報共有のあり方や、クレジットによる支払い、クーポン等の活用法を解説したものだ。

 このブループリント(青写真)では、携帯端末の拡大がオムニチャネルという新たな顧客接点空間を創造し、その接点の拡大に寄与するとしている。事実、スマ―トフォンの台頭だけでなく、SNSの広がりが、小売業と顧客の接点の関係を複雑化させているのである。

 筆者はオムニチャネルについて、いち早く2年以上前から実際の事例を研究してきた。それゆえ、日本でのオムニチャネル・リテイリングの専門家第1号であると自負している。

 まず、オムニチャネルの概念を次のページで解説したい。