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“ニッポンの地方”再生物語

「古き良き湯の街の誇りを蘇えらせる」
報道されない財政危機宣言の“その後”
熱海市の“街の灯”は輝きを取り戻したか?

【第2回】 2012年7月25日
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観光地として全国的に有名な静岡県熱海市。「高級温泉街」「お金持ちの別荘が並ぶ保養地」といった華やかなイメージがあるが、足もとでは日本の地方都市が抱える課題が集まったような街になっている。現市長による「財政危機宣言」から6年、当時は大きく報じられた熱海市の危機も、後日談はほとんど紹介されていない。再生への取り組みは進んでいるのか。多くの観光客を魅了し続けた熱海の「街の灯」は、再び輝きを取り戻したのか。(取材・文・撮影/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

「住むならやっぱり地元かな」
若者たちが熱海を選んだ理由

海と山の街・静岡県熱海市。海岸から丘陵にかけて温泉旅館やリゾートマンションが建ち並ぶ光景は美しく、壮観だ。熱海湾では年間12回、市内全体で年間17回の花火大会が開催され、年間約29万人が集まる。

 「地方都市ですから、客足は厳しいと言えば厳しいですよ。でも今年は、ゴールデン・ウィーク頃から、夜、街へ飲みに出て来るホテルのお客さんが増えてきた気はします。観光シーズンが本番を迎える夏にかけて、これからが稼ぎ時です」

静岡県熱海市の夜の商店街――。海にほど近い路地の奥に佇む小さな料理店で、マスターの本庄誠さん(仮名・34歳)はこう語る。

 本庄さんは、もともと首都圏出身で、数年前まで東京の大きな飲食店で働いていた。しかし、引っ切りなしに訪れるお客に“食べ物”を提供するだけの日々に疲れ、「お客さんとじっくりコミュニケーションがとれるお店を自分でやりたい」と店を辞めた。そんな彼が新天地に選んだのはここ、熱海だ。

 理由は「静岡出身の友人に『いいところだよ』と勧められたから」。海が穏やかで気候が暖かく、時間がゆっくり流れるこの地を気に入っているという。

 「ここはいいお店ですよ。儲けは少ないけどね」

 カウンターでそう笑うのは、この店の常連客である神田美穂さん(仮名・27歳)。熱海市出身の美穂さんは、近隣の学校を卒業後に「東京に出ようか、それとも名古屋へ行こうか」と迷った末、地元に残ることにした。潮の香りを嗅ぎながら、温泉街を歩いた幼い頃の記憶が忘れられず、「住むならやっぱり地元かな」と思ったという。

 自称「温泉美人」の美穂さんは、この地で特別に大きな夢を思い描いているわけではない。将来は、何でもいいから、地元の人が集まり、皆が楽しめるアットホームな店を自分で持ちたいという。

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シャッター商店街、過疎に高齢化……地方の衰退が言われて久しい。が、地方でも自らの特徴を見つめ、知恵を出し、自らの力で、再生しようという動きが、あちこちで起こっている。地方の自立向けた果敢な取り組み、ユニークな取り組みを紹介する。

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