2012年7月25日、政府は、東京電力(東電)の家庭向け電気料金の値上げ幅を、同社が申請した10.28%から8.46%に圧縮して認可した。値上げ幅については、経済産業省の電気料金審査専門委員会が9.3%程度に圧縮する報告書をまとめたものの、これに対してさらに消費者委員会や消費者庁がさらに削減を求めていた。

 この問題につき、筆者は、消費者委員会の電気料金問題検討ワーキングチーム外部有識者として議論に参加し、意見を述べた。しかし、筆者らの意見の主要部分は、最終的な決定に反映されていない。

 もちろん、外部有識者の意見は、参考程度のものにすぎず、国民の負託を受けた政治家が最終判断をするのは当然のことである。それでも、なお、現在の電気料金決定の基礎とされた「総括原価算定方法」の問題点を指摘しておくことには意味がある。原発停止によって燃料費等の割合が増加しているというのは、他の電力会社も抱えている問題であり、今後、値上げ申請が続く可能性があるからである。

電気料金決定問題の本質

 現在、電気料金は、総括原価方式によって算定されることになっている。総括原価というのは、燃料費・購入電力料、電気事業用資産の減価償却費、修繕費や人件費に、事業報酬(電力会社の儲け)を加えて計算される。適切な原価より、電気料金収入が小さければ、値上げが認可される。事業報酬は、レートベースと呼ばれる電気事業用資産額に事業報酬率を掛けて計算される。電気料金は、電力会社が適切な利益を上げられるように決定されるということである。

 今回の東電の値上げ申請の認可にあたって、経済産業省は独立した専門家によって構成される電気料金審査専門委員会を設置し、総括原価の各項目が妥当かどうか厳しくチェックした。同委員会が7月5日に公表した「査定方針案」においても、かなり厳しい削減要求がなされている。