汚染土壌を東電と国に返却
猛烈な暑さとアスファルトからの照り返しで、かげろうが立つほどだった7月17日午後の東京・霞が関。そこで目にした符合のような光景が忘れられない。
経済産業省の正門前に陣取った小さなビニール袋を手にした集団が、足早に通り過ぎる人びとに呼びかける。
「経済産業省の前を通る皆さん、いま集まっている私たちが手にしているのは福島の放射線で汚れた土壌です。ぜひご覧になってください。福島から徒歩で運ばれたものです。私たちは汚染土を東電と国に返しに来ました」
灰の行進──。
福島県二本松市に住む関久雄氏らが、自宅などの庭から持ち寄った汚染土を「責任元の東電と国に返す」と、福島の自宅から東京まで歩いた抗議行動である。この日、14人が汚染土を持参した。
彼らはひとしきり街頭で呼びかけた後、同省のロビーで応対に出てきた資源エネルギー庁原子力政策課の若い担当者に、原子力政策の見直しや福島の子どもに避難の権利を認めることなどを求めた。汚染土を渡す際、関氏らは若い担当者にこう訴えた。
「これは除染した庭の土です。昨年6月に毎時7~9マイクロシーベルトありました。除染しましたが4マイクロシーベルトまでしか下がらなかった。福島の声に耳を傾けていただけるなら、原発再稼働に進むのではなく、脱原発に舵を切っていただきたい」
「年間20ミリシーベルト以下の被曝なら大丈夫といわれている福島の住民の不安を感じ取ってください」
おそらく、面倒ごとを押しつけられる格好で応対を任された若い担当者は、消え入りそうな声で「貴重なご意見として参考にさせていただく」と型どおりの回答を残し、土を手に館内へと消えた。