どうすれば、親の所得や住んでいる地域によって生じる教育格差をなくし、教育の機会均等を実現できるのか。私は、その突破口がICTにあると思っています。しかしながら、日本では、学校教育におけるICT化が思うように進んでいないように思われます。
そこで、今回は、ICTを駆使した学校教育で先行的な取り組みを行っている韓国の事例を紹介しましょう。ICTを使った教育そのもののデジタル化は、すべての国において実験レベルだと思います。誰もがやったことのない未知の世界への挑戦です。必ずしも韓国が先進事例とは言い切れませんが、韓国の事例から見えてくるものもあろうかと思います。
日本の「教育基本法」が定める
「教育の機会均等」の素晴らしさ
大津市の公立中学校の自殺事件をきっかけに、このところ、日本では、学校教育のあり方に関する議論が沸騰しています。前回、次回は日本の行政サービス情報化の課題と解決策についてお話ししますとお伝えしましたが、日本で教育の話題が注目を浴びているので、今回は学校教育に関する話題を取り上げたいと思います。行政サービスについては、機会を改めてお話しいたします。
私は、日本の「教育基本法」第4条の「教育の機会均等」を知り、大変素晴らしい法律だと感動しました。そこには、
(1)すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
(2)国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
(3)国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない
と書かれていたからです。
しかしながら、同時に私は、現在の日本でこの法律通りの教育が実現されているかと言えば、必ずしもそうとは言えないのではないかと思いました。事実、親の所得によって子どもが受けられる教育の質や量は大きく異なっていますし、都心と地方との間での教育格差は年々広がっているように感じられるからです。
では、どうすれば、親の所得や住んでいる地域によって生じる教育格差をなくし、教育基本法が謳っているような、教育の機会均等を実現できるのか―。私は、その突破口が、ICTにあると思っています。そこで、今回は、まずは前編で、ICTを駆使した学校教育が行われている韓国の実例を紹介し、次に後編で、日本の学校教育の現状と課題、解決策について、述べていきたいと思います。