そうした事態を防ぐためには、一人ひとりの人と真摯に向き合い、自社のデメリットについても自ら明かすほうが得策といえるでしょう。

 私自身、採用したい人材に対しては、将来性などのポジティブな情報だけでなく、「ただ、うちの会社はこういう点では苦労するかも」とか、「以前、こういう理由で人が大勢辞めたことがある」などといったネガティブな情報もあらかじめオープンにしています。

 ネガティブな情報を開示しても、世間で思われているほど悪い印象を与えることはないですし、いい人材は「危機的な状況ほどやる気を出してくれる」実感があります。
 採用された側としても、ネガティブな情報ほど前もって知っておいたほうが備えやすく、入社後の対応(アジャスト)が楽になります。その結果、長く働いてくれることにもなりますから、お互いにとって情報をオープンにする意味は大きいと言えます。

 これはいわば、まだ高待遇やブランド力を提供できない企業が採るべき、「弱者の戦略」なのです。

②面接を「人を選別する場」だと思っている

 面接の位置づけについても、誤解している企業が目立ちます。

 現在の採用市場において、面接は人材を見極めるだけの場ではありません。少数の優れた人材を採りに行くためには、見極めた人材に対して企業側がPRしなければなりません。上から目線で「うちに採用してやろう」という態度では、相手は離れていきます。

面接には
・見極め(いわゆる採用面接)
・アトラクト
・クロージング

の3つの種類があります。

 アトラクトとは、「その企業の面接に来る人に対して魅力づけを行うこと」です。
 今の時代、転職や就職をする人は必ず企業が発信する情報を見ています。求める人材を採用するためには、魅力的な広告を打ったり、SNSによって自社の情報を拡散したり、様々なコンテンツを用意することが必要になります。

 そうしたアトラクトを経て、「これは」という人材に対して行うのが「クロージング」です。優秀な人ほど複数社からオファーが来ていて、迷っていることも多いです。営業活動と同じように、何度も食事をしたり、直接会ってお互いのことを話したりして、相手をつなぎとめる必要があります。

 かつての大量採用時代であれば、ただ見極めるための面接をこなしていればよかったものが、現在はアトラクトやクロージングが重視されるようになりました。上から目線で見極めようとする企業は、次第に淘汰されてしまうでしょう。