君さえ我慢してくれたら…
「顧客からのセクハラと上司からのパワハラ混合タイプ」

《特徴》
 かつては若い女性社員を接待に同席させ、自社に有利な商談をまとめるケースがありました。枕営業を強要する上司もいました。しかし、あってはならないことです。
 以前なら我慢する人もいたでしょうが、現在はそうではありません。録音されて外部に漏れたら、行為者も会社も大きな痛手を負います。

泣き寝入りしない、させない! セクハラから始まるパワハラ「顧客からのセクハラと上司からのパワハラ混合タイプ」(『管理職のためのハラスメント予防&対応ブック』より) イラスト:田渕正敏

 このタイプのパワハラは、特定のお客様に依存すると発生しやすくなります。このお客様から仕事をもらえないと会社が倒産してしまうという関係になると、取引先から納期、価格、接待など、いろいろな面で無理な要求をされるケースがあります。そのプレッシャーによって社内ハラスメントが発生します。
 取引先の意向を受けた部長が、「どうしても明日までに企画書をつくり直してほしい」と言ったり、女性社員に対し、「先方のA部長が君のことをお気に入りなんだ。食事に行ってくれないか」などと強要したりします。

 または、事業構造も原因として挙げられます。閉鎖的な職場環境の中で重要な仕事相手がいると起きやすい。たとえば、テレビ局の政治部の記者は、国会議員や高級官僚に話を聞かなくてはなりません。仮に国会議員や高級官僚がテレビ局の女性記者に対し、常習的にセクハラを行っていたとします。卑猥な言葉を繰り返し投げかけられたり、食事やホテルに誘われたり、ボディタッチされたりします。
 上司に相談しても、「それくらい我慢しないと仕事にならないだろう」と言われます。話を聞く対象の代わりがいないから、セクハラされても我慢せざるをえないのです。

 ではそのテレビ局を辞めて別の局に行くかと言えば、業界内に限られた会社しかなく、他社へ自由に転職もできません。

《対処法》
 会社からの方針を明確にし、このような顧客からのセクハラを黙認・強要することのないように徹底します。

 次回は、「偽パワハラ」と呼ばれる、パワハラの虚偽申告の事例について説明します。