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大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

“大川小児童の重大証言”はなぜ無き物にされたか
遺族も憤る元指導主事が「証言メモを捨てた理由」

加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]
【第7回】 2012年8月17日
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東日本大震災から1年5ヵ月が過ぎた。大津波によって、児童と教職員84人が犠牲となった宮城県石巻市の大川小学校。児童の遺族の一部は、いまもなお、学校管理下で起きた事故の真相を探り続けている。今年6月から始まった当連載では、真相解明の実情や、市教委の対応と二転三転する回答ぶりと、遺族の不信感、文科省の認識などについて紹介してきた。第7回となる今回は、第4回でも取り上げた、事故調査のメモを廃棄した問題の当事者である、元指導主事から直接話を聞いた。

調査方法も記録の仕方もバラバラ
真相究明を混乱させた「聞き取り調査」の実態

大川小の児童遺族の持ち歩く開示資料は、かなりのボリュームになってきた。
(2012年8月10日、石巻市役所)
Photo by Yoriko Kato

 石巻市立大川小学校の津波被害の取材を続けていて、児童遺族の中から一番多く聞かれるのは、やはり「真実を知りたい」という言葉だ。

 あの日、あのとき、子どもたちは学校管理下にあったにもかかわらず、なぜ避難に失敗して津波に遭ってしまったのか。1年5ヵ月がたった今も、真相は解明されていない。

 当時の状況を知るための手がかりとなるのが、市教委にいた加藤茂実指導主事(現 大原小学校校長)がまとめた記録<「3.11震災」に関する事情聴取の記録>だ。震災から2ヵ月後の昨年5月に、生存者を含む児童・教職員から聞き取ったものだ。

 しかしこの証言記録は、信頼のおける方法で作成されたものではなかった。

 開示された調査記録の文書には、不思議なことに、調査方法がどこにも記載されていない。子どもたちと、どんな空間で、何人で、どれくらいの時間向き合い、どのように調査をしたのかが、記録文書からではわからないのだ。

 現在の指導主事に聞いたところでは、1件当たりにかけた聞き取り時間は30分前後で、市教委と学校の教諭が2、3日にわたって手分けをしたという。簡単な項目が用意されているが、記述のトーンもボリュームも記録者によってばらばらで、調査の方向性に沿った手法がきちんと共有されていない印象だ。

 なかには、低学年の子どもと、遊びながらそれとなく聞き取っただけのものもあり、聞き取りの担当者の記憶を頼りに、後からメモに書きつけたという話だ。

 このようなやり方で行われた調査は、当然ながら、真実を検証するにあたって、混乱を招く結果となった。実際に、矛盾点や不備を遺族側から指摘され、市教委は対応を二転三転させる事態に陥っている。

 私たちは、この調査や、唯一生存したA教諭の聞き取りの報告書作成等を担当した、加藤元指導主事に直接話を聞いた。

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加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]

気象キャスターや番組ディレクターを経て、取材者に。防災、気象、対話、科学コミュニケーションをテーマに様々な形で活動中。「気象サイエンスカフェ」オーガナイザー。最新著書は、ジャーナリストの池上正樹氏との共著『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)。『ふたたび、ここから―東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(ポプラ社)でも写真を担当し、執筆協力も行っている。他に、共著で『気象予報士になる!?』(秀和システム)。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)。
ブログ:http://katoyori.blogspot.jp/


大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

東日本大震災の大津波で全校児童108人のうち74人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校。この世界でも例を見ない「惨事」について、震災から1年経った今、これまで伏せられてきた“真実”がついに解き明かされようとしている。この連載では、大川小学校の“真実”を明らかにするとともに、子どもの命を守るためにあるべき安心・安全な学校の管理体制を考える。

「大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~」

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