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開沼博 闇の中の社会学 「あってはならぬもの」が漂白される時代に
【第6回】 2012年8月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
開沼 博 [社会学者]

第6回
“ポケモン”を管理するスカウトマン
スマホで地下化する性風俗産業

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一昔前までは、大都市の繁華街に足を運べば、強引に声をかけているキャッチ(客引き)やスカウト、電柱のピンクチラシを頻繁に見かけた。しかし、全国的な浄化作戦が実施されるなかで、街が持つ猥雑さはかつてほどの勢いを失っているかのようにも思える。私たちは快適な街を歩けるようになったのだろう。そう、いたるところに無数の“スカウトマン”がいることも知らずに――。
社会学者・開沼博は繁華街のスカウトで生計を立てる28歳の青年、赤坂に密着する。赤坂は使い慣れたスマートフォンで20人以上の“ポケモン”を管理する敏腕スカウトマンだ。10年以上にわたり、穏やかな日常と「あってはならぬもの」をつなぎ続ける彼が語る、急速な技術革新が、猥雑さを失いつつある街にもたらした驚くべき変化とは。
私たちが見ているようで見ていない、もしくは見えない“ふり”をしている現実とは何か。スカウトマンの姿を通して、2週連続で漂白された繁華街の真実に迫る。次回更新は8月28日(火)(通常は隔週火曜日更新)。

スマホの中で20人以上の“ポケモン”を管理

 「女のコはポケモンの名前で入れてるんですよ」

 携帯電話の話題になった時、そんなエピソードが出てきた。iPhone4Sの中に登録された“ポケモン”の数は20を超える。

 「着信で名前が出てるの見られたりしたら色々ややこしいじゃないですか。オレのことを会社員で、付き合っている彼氏だと思っているコもいれば、とりあえず店に送り込んだだけでずっとスカウトバックが入ってきているコもいます」

 こう語る赤坂は28歳。身長は180センチ、体重は80キロを超え、色黒の肌に短髪というコワモテだ。彼は「ヘルス(ファッションヘルス)」や「デリヘル(デリバリーヘルス)」と呼ばれる性風俗店に働き手を斡旋する「スカウト」を生業としている。

 赤坂が「スカウト」を始めたのは高校生の時。ただ、その対象は女のコではなかった。

 「地元の知り合いから『工事現場の力仕事に人が足りない』っていう話がきたんで、人を集めて連れて行った。やってみると、一人頭の日給が1万円なら、数千円とかが自分のところにバックされる。10人集めて送り込めばたいした売上になるわけです。まあ、人夫出し(にんぷだし)なんて人手が欲しい現場では大昔からある話ですよ。“人材業”を始めたのはそのころからですね」

 「バイトやらん?」と地元の友人・後輩に声をかけ、本人、あるいは本人がダメでも「紹介料払うから」とその周囲に声をかけてもらい、芋づる式に人を集めていく。地元の進学校に通う高校生でありながら、毎月数十万円が手元に入るようになっていた。

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開沼 博(かいぬま・ひろし) [社会学者]

1984年、福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。専攻は社会学。学術誌のほか、「文藝春秋」「AERA」などの媒体にルポ・評論・書評などを執筆。
著書に『漂白される社会』(ダイヤモンド社)、『はじめての福島学』(イースト・プレス)、『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)、『地方の論理 フクシマから考える日本の未来』(同、佐藤栄佐久との共著)、『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』(幻冬舎)『「原発避難」論 避難の実像からセカンドタウン、故郷再生まで』(明石書店、編著)など。
第65回毎日出版文化賞人文・社会部門、第32回エネルギーフォーラム賞特別賞。

 


開沼博 闇の中の社会学 「あってはならぬもの」が漂白される時代に

不法就労外国人、過激派、偽装結婚プロモーター、ヤクザ、チーマー、売春婦……。彼らはときに「アウトロー」や「アンダーグラウンド」と評され、まるで遠い国のできごとのように語られてきた。しかし、彼らが身を置く世界とは、現代社会が抱える矛盾が具現化された「ムラ」に過ぎない。そして、「あってはならぬもの」として社会からきれいに“漂白”されてしまった「ムラ」の中にこそ、リアリティはある。
気鋭の社会学者である開沼博が、私たちがふだん見えないフリをしている闇の中へと飛び込んだ。彼はそこから何を考えるのだろうか? テレビや新聞を眺めていても絶対に知ることのできない、真実の日本を描く。全15回の隔週火曜日連載。 
 

「開沼博 闇の中の社会学 「あってはならぬもの」が漂白される時代に」

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