ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
開沼博 闇の中の社会学 「あってはならぬもの」が漂白される時代に
【第1回】 2012年6月5日
著者・コラム紹介バックナンバー
開沼 博 [社会学者]

第1回
取り残された「売春島」に浮かぶもの
現代社会のリアリティ

1
nextpage

『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)で大きな注目を浴びた、社会学者の開沼博。私たちがふだん見えないフリをしている闇の中へと飛び込んだ彼は、いったい何を考えるのだろうか? タブー視された世界からしか見えてこない、現代社会の実像を描き出す。
第1回・第2回は、「表」と「裏」のはざまでもがき苦しむ「売春島」の真実に迫る。連載は全15回。隔週火曜日に更新。

 「おかしなこと」から引かれる社会の「補助線」

 「おかしな島があるらしい」

 人づてにそんな話を聞いて到着した船着場。この先にどんな化け物が住んでいるのか。タイムスリップでもするのだろうか。もちろん、そんな事態は起こらなかったが、たしかにそれは「おかしな島」だった。

昼の島にはおだやかな時間が流れている

 昼間のビーチには人が集まり、夜は遊覧船に集う家族連れ。のどかな海と静かな風。しかし、夜の始まりとともに空気は一変する。「表」の顔が一気に「裏」の顔へと反転して……。

 ******

 これから始めようとしているのは、私たちが今生きる社会に「補助線」を引く試みだ。

 「なんか上手くいかないよな」「もっといい世界があるんじゃないか」。多かれ少なかれそんな不全感を抱えながらも、日々を生きる私たち。目の前にある社会を、私たちは捉えているようで捉えていない。「おかしなこと」が身の回りに溢れているのにも拘らず、大事に至らない限りそれに気付くことはないのだから。

 私はここ5年ほど、社会の中に存在する「おかしなこと」を視界の中に収めようと歩き回ってきた。

 「おかしなこと」の一部が偶然に多くの人の無意識から意識の中へと飛び出してきたことはあったけれども、それはあくまで「おかしなこと」の一部に過ぎない。社会の全体性を捉えうる「補助線」を一筆書きするための歩みを、そこでとめるわけにはいかない。

 「おかしな島」に映りだす像を描くことから、それを始めたいと思う。

 ******

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
最新の科学でわかった! 最強の24時間

最新の科学でわかった! 最強の24時間

長沼敬憲 著

定価(税込):本体1,400円+税   発行年月:2017年4月

<内容紹介>
生物学、脳科学、医学で次々と解明されてきている、人間の心身を支配する生体リズムの仕組み。健康管理から勉強、ビジネスに至るまで、人間のあらゆる行動に存在している、それをするのに最適な時間を理解すれば、何事にも効率的かつ確実に目的を達成することが可能になる。

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍

(POSデータ調べ、5/14~5/20)



開沼 博(かいぬま・ひろし) [社会学者]

1984年、福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。専攻は社会学。学術誌のほか、「文藝春秋」「AERA」などの媒体にルポ・評論・書評などを執筆。
著書に『漂白される社会』(ダイヤモンド社)、『はじめての福島学』(イースト・プレス)、『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)、『地方の論理 フクシマから考える日本の未来』(同、佐藤栄佐久との共著)、『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』(幻冬舎)『「原発避難」論 避難の実像からセカンドタウン、故郷再生まで』(明石書店、編著)など。
第65回毎日出版文化賞人文・社会部門、第32回エネルギーフォーラム賞特別賞。

 


開沼博 闇の中の社会学 「あってはならぬもの」が漂白される時代に

不法就労外国人、過激派、偽装結婚プロモーター、ヤクザ、チーマー、売春婦……。彼らはときに「アウトロー」や「アンダーグラウンド」と評され、まるで遠い国のできごとのように語られてきた。しかし、彼らが身を置く世界とは、現代社会が抱える矛盾が具現化された「ムラ」に過ぎない。そして、「あってはならぬもの」として社会からきれいに“漂白”されてしまった「ムラ」の中にこそ、リアリティはある。
気鋭の社会学者である開沼博が、私たちがふだん見えないフリをしている闇の中へと飛び込んだ。彼はそこから何を考えるのだろうか? テレビや新聞を眺めていても絶対に知ることのできない、真実の日本を描く。全15回の隔週火曜日連載。 
 

「開沼博 闇の中の社会学 「あってはならぬもの」が漂白される時代に」

⇒バックナンバー一覧