本連載でレポートしてきたように、日本社会にはもっと弁護士が必要だという認識のもと、新司法試験制度がつくられ、日本全国に法科大学院を創設し、司法試験合格者数を1000人前後から3000人に激増させる施策が、急ピッチで進められた。さらに、「将来、稼げるようになるのだから、税金で弁護士の卵を養う必要はない」との声によって、司法試験に合格した司法修習生を国が支援する給費制は廃止された。
こうした激変の結果、弁護士人数の急増により弁護士の就職難を引き起こした。さらに、弁護士になっても食えないことが分かり、法曹を目指す人は減少していった。法科大学院は入学者数を集められなくなり、苦境に立たされている。噴出する問題に、山岸憲司・日弁連会長はどのような考え方で臨むのか、考えを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)
司法制度改革は
成功だったのか
――司法制度改革から10年が経った。新司法試験への移行と法科大学院創設による法曹人口の増加、弁護士活動領域の拡大などを進めてきた。しかし、現実にはさまざまなひずみが出てきていて、成功しているとは到底思えない。会長はどのようにこの10年を評価するのか。司法制度改革は、果たして成功したのか、失敗したのか。
司法制度改革は市民がいつでも、どこでも、だれでも、法的サービスを受けられ、法律によってすべての市民の権利が守られ、司法サービスを受けることができる社会を目指したものだ。法の下の平等を、本当の意味で実現する。それは、恣意的な権力の行使を排除するということを意味する。透明で公正なルールに則った紛争の解決ができる社会にしなくてはならない。それは市民社会でも、企業内でも、行政庁の活動であっても、だ。これまで弁護士が活躍してきた場面以外で、弁護士が求められた。
そのために、弁護士の業容を拡大することが必要だった。司法試験合格者数を増やし、法曹人口を増やす。企業内弁護士もどんどん増えて行くだろうということだった。法曹養成に関しても、ただ判決文やさまざまな書類を書くための訓練をするのではなく、今後、活躍が求められるさまざまな場面で求められる社会的法的ニーズに応えられる弁護士を育てる必要が考えられた。だから、法曹養成制度を改革し、法科大学院を創設した。