シリコンバレーで考える 安藤茂彌
【第10回】 2008年9月25日
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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学客員教授]

米金融危機、付け焼刃の対応策が残した大きな課題

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 筆者はいまサブプライムローンをリーマン・ブラザーズから借りている。最初は別の金融機関から借りていたのだが、転売されて今はリーマン・ブラザーズから借りた形になっている。その銀行が倒産してしまった。だが、リーマンからは何の連絡もない。

 テレビでは今まで、「アメリカ経済は健全か」、「この問題に対処できる人材はマケイン候補かオバマ候補か」が議論されている。悠長な話である。ブッシュ大統領も政策の間違いを認めたくないのか、今まで経済問題に踏み込んだことは少なかった。国民の多くは今まで金融危機を肌に感じていなかったが、この1週間で状況は一変した。

 多くの国民が「経済問題が大統領選挙の最大の焦点である」と認識するようになった。ではブッシュ政権の責任を問えば足りるのか。そうではないと思う。最大の責任は破綻した金融機関の経営者にある。次にこうした事態を放置してきた行政当局の怠慢にあると思う。

リーマンは「ババ」をつかまされた

 また筆者の経験に戻って話をしよう。筆者が住宅ローンを借り入れたとき、返済条件に3つの選択肢があった。1番目は利息を満額支払い、元本も徐々に返済していく方法。伝統的な返済方法である。2番目は、利息は満額返済するが、元本は全く返済しない方法。これだといつまで経っても借金は減らない。3番目は、利息も一部しか支払わない方法。これだと支払われなかった利息は元本に上乗せされて、借金はどんどん増えてしまう。私は怖くなって1番目の方法を選んだ。

 この話を持ってきた金融ブローカーに、「2番目、3番目でどうやって元本を返済するのか」と聞いたら、「余裕ができたときに返済すればよい」との回答であった。何と心地よい借金であろうか。「ところで金融ブローカーはどうして収入を得ているのか」と聞いたら、「ローンを積み上げたい銀行や投資家から手数料の支払いを受ける」とのことであった。

 ローンが実行された後に、筆者のローンは3回転売されて、リーマン・ブラザーズが貸し手になった。3番目の返済方法を選んでも最終的にリーマンに行き着いたかもしれない。リーマンはこうしたローンを束ねて、なんらかの加工をした金融商品を買ったのだろう。転売が可能で、金融商品に転換されたら、本来のリスクは容易には見えなくなってしまう。

 転売を仲介するブローカーは手数料を取るので、ローンそのものはきわめて採算の悪い「ポンカス」ローンになって流通しているはずだ。これはトランプの「ババ抜き」に似ている。「ババ」をつかんだものが負けなのだ。急いでローン資産を積み上げようとすれば、「ババ」をつかむ。リーマンはこの分野で後発組だったので「ババ」をつかんだのだろう。

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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学客員教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ


シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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