企業と個人が互いに成長できる関係づくりについて研究を行うキャリアアセットマネジは、神戸大学大学院経営学研究科で組織論を専攻し、人的資源管理に携わる伊達洋駆氏とともに“エンプロイアビリティ(雇用され得る力)”の実証を伴う開発を行っている。このほど同社と伊達氏は、組織に貢献する人材力の研究を目的に複数企業の人事担当者への取材を実施した。本連載では、この取材結果に基づき、人材確保と養成のための実践的な方法について、伊達氏の考察を展開していく。

 

伊達洋駆 だて・ようく
神戸大学大学院経営学研究科所属。産学連携をコーディネートするリエゾン組織、株式会社ビジネスリサーチラボ取締役

グローバリゼーションが進展し、ITが人々の生活を驚くべきスピードで変化させている現在、企業は事業環境の変化に絶えず気を配らなければならなくなった。当然、それは人事戦略にも影響してくる。ビジネスの現場が日本から中国へ変わることもあれば、事業が製造業からサービス業へと変わることもある。

そのような劇的な変化のなかでも、一定の価値を生み出せる人材が必要とされている。それでは企業は今、人材のどのような点に注目し、採用・育成を進めようとしているのか。企業への取材をもとにした伊達氏の考察を見ていこう。
 

企業は時代にあわせて
変化していくもの

 企業と社員との関係は、時代とともに変化します。戦後から高度経済成長期までは、組織が一枚岩となって一つの目標に向かい邁進する、いわゆる軍隊的な形態が一つの理想でした。その後、消費社会が到来して嗜好が多様化すると、そこに対応するために、個人の専門性を重んじた分業化が進みました。

 しかし、今回の企業人事の取材を通して、長期的な不況の中、今また求心力を持って変化に立ち向かう強い組織が求められている現状が見えてきました。

 一度、分社化した子会社を再び統合したTBSは、企業において部門横断的に求心力を持って変化に対応することの大切さについて、次のような見方をしています。

「TBSがここのところ、視聴率的に苦しいことの原因はなんだろうとみんなが考えた時に、それぞれのセクションの壁が厚く、コミュニケーションや風通しがよくないことが指摘されました。そこで部署横断的な人事交流を行って、“その道のプロ”としてだけではなく、組織人としても育てていくことにしました」(TBS 人事部 中山氏)