「ひきこもり」の高年齢化が加速
インターネットだけが“希望”?

 地方自治体で、ここ最近、引きこもり問題に、最も手厚い取り組みを行っているのは、首都・東京都だろう。

 その中で、都は、ひきこもり状態にある本人や、その家族、友人らを対象に、専門の相談員が、インターネットや電話、モバイルによる「東京都ひきこもりサポートネット」と呼ばれる相談に無料で応じている。

 興味深いのは、07年7月からスタートした電話相談の新規登録者数の年代。09年3月までに、電話で相談のあった引きこもり当事者計1676人のうち、08年度(08年4月~09年3月)1年間の年代別内訳(不明者を除く)を見ると、30代が3割弱、40代以上も15%に上っていることだ。

 一方、04年11月からスタートしたインターネット相談の新規登録者は、09年3月までに、計1817人。この若い世代がアクセスしやすいネット相談者の08年度1年間の年代別内訳をみても、30代が3割弱、40代以上は1割を占めるなど、やはり高年齢化の傾向が浮き彫りになった。

 実際に、都が元々、自宅訪問などの支援事業で想定しているのは35歳未満だが、今回の相談対象者である引きこもりの年齢について、都は08年にすでに「40代、50代も散見する」と報告。「40代以上は、問題が長期化し、深刻な相談内容が少なくなかった」と紹介している。

 また、08年3月までのネット相談の内訳をみると、引きこもり本人からの相談は、約55%と高かった。本人以外では、母親が約14%、姉が8%弱、父親が7%、友人・知人が3%余りと続く。社会の人々との関係性が断絶され、地域に潜在化する引きこもり当事者にとって、インターネットは唯一「相談してみようかな」と思わせる“希望への入り口”になっている状況が窺える。

きっかけは「職場不適応」が47%
企業の“無策ぶり”が顕著に

 もう1つ、注目したいデータがあるので、紹介したい。

 都は09年に「ひきこもり状態にある高年齢層(35歳以上)の状況」を初めて明らかにしている。とくに、35歳以上(49歳まで)の「ひきこもりのきっかけ」をみると、最も多かったのは「職場不適応」で、47%と半数近くを占めたのだ。次いで「人間関係の不信」33%、「病気」22%などが続き、「就職活動不調」も16%に上った。

 ひきこもり期間についても「7年以上」の長期が61%を占めた。一旦、社会からリタイアしてしまうと、なかなか復帰できないまま、地域で長期化せざるを得なくなる実態が推測できる。

 このように、都は「ひきこもりのきっかけで、“職場不適応”が意外に多かった」ことから、就職経験のある求職者などの「就労に関する実態調査」も実施した。