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山崎元のマネー経済の歩き方

ビジネスにおける人間のALMリスク

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第52回】 2008年10月14日
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 リーマン・ショック以降、米国の投資銀行が、あたかも仕掛けを見破られた手品師のように商売替えを急いでいる。メリルリンチはバンク・オブ・アメリカの傘下に入り、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは銀行持ち株会社への移行を表明した。

 両社はこれで連銀からの資金融通を受けることができるが、同時に銀行として連銀の規制と監督下に入る。今後は、預金を持つ銀行を合併するかたちで、主導権を取りつつ「財布」の拡大を目指すのだろう。

 こうしてできたユニバーサル・バンク的な銀行は、投資銀行ビジネスのリスク管理をできるのか。

 たとえば、スイスの大手銀行UBSの株主向けレポートによると、リスク管理の機能不全を背景に、同行の投資銀行部門が商業銀行のクレジットをいわば食い物にしたことが、巨額のサブプライム損失が発生する原因となった。

 もともと投資銀行は、リスク評価とプライシング評価の難しいものを取り扱うことで成り立つビジネスだ。投資銀行部門のプレーヤーが、経営者や金融監督当局をごまかして大きなリスクを取ることは、しばしば可能なはずだ。

 ここで大きな問題の1つがプレーヤー個人に与えられた成功報酬のコールオプション的性質であることは、本欄で何度か指摘したとおりだが、もう1点、個々のビジネスの時間軸と、プレーヤーの評価と報酬の期間に、金融機関のALM(資産負債管理)でいう「期間のミスマッチ」があることが厄介だ。

 たとえば、サブプライム・ローンの証券化商品は金融機関の調達金利以上の表面利回りを持っていたので、銀行がこれに投資すると、問題が発生するまでは大きな利ザヤを稼げていた。この投資の担当者への業績評価とボーナス支払いの単位は通常1年であり、ルール違反がない限り1度支払われたボーナスは返還しなくていい。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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12社を渡り歩いた資産運用の現場に一貫して携わってきた視点から、「資産運用」の方法をどう考えるべきか懇切丁寧に説く。投資家にもわかりやすい投資の考え方を伝授。

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