2019年に中国で発生した新型コロナウィルス(COVID-19)は、2020年に世界中で大流行し、いまだに収束する気配がない。
日本政府はGo Toキャンペーンに熱心だが、季節が冬に向かうのに合わせてか、感染者が激増している。
ヨーロッパでは再びロックダウンに踏み切る地域も出てきた。
経済アナリストであり、歴史にも詳しい中原圭介氏は、この状態が長引く、あるいは収束してもすぐに次のウィルスが現れると読む。
つまり我々は、ウィルスと共存する時代を生きていかねばならないのだ。
我々はこの困難な状況の中でいかにして経済を立て直していくべきなのか?
中原圭介氏の最新刊である「疫病と投資」から一部を引用し、考えてみたい。

本物の「成果主義」がやってくるPhoto: Adobe Stock

コロナ下の「テレワーク」は
日本の人事評価を変える

テレワークの普及がもたらす効果は、生産性の向上や生活の潤いだけではありません。日本人の働き方の意識が「時間」から「成果」へと変わっていく効果も期待できるのです。日本企業の先行指標となるトヨタでは、すでに2019年から職務における能力や成果によって評価が決まり、それによって給与や待遇を柔軟に見直す仕組みが取り入れられています。

仕事でのモチベーションが高い人が増えて生産性が上がれば、給与は自然と上昇していくようになります。私たちの生活実感に近い「実質賃金」が上昇し、本当の意味での経済の好循環が達成できるようになるのです。ただし、この恩恵を受けられる人は、きちっと働いた人あるいは成果を出した人だけです。残業代欲しさにダラダラ長時間働いていた人には厳しい社会になるかも知れません。

テレワークが広がると、仕事の能力に対する個人差が、誰の目にもはっきりと見えるようになります。そうなった時、前述したように働き方の意識が「時間」から「成果」へと変わりますから、能力差に応じた待遇をしなければ、組織内の公平性が保てなくなります。

たとえば資料を作って欲しいと上司が部下に依頼したとしましょう。以前であれば、多くの大企業では上司が「資料が欲しいから手分けして作ってくれ」と、部下に丸投げします。すると、優秀な部下数人が手分けして資料を仕上げて上司に渡していました。

上司からすれば、誰がどの部分に関わったのかが分かりません。ところが、テレワークが普及すると、出来の良い資料を作ったのは誰かが、上司の目にもはっきりと分かってしまいます。あるいは、ビデオ会議では発言内容がそのまま評価の対象になります。積極的に良い発言をした人は高い評価が得られますが、会議に参加しているだけで何の発言もせず、あるいは発言内容に何の価値もないような人は、そのうち会議にも招集されなくなります。「チームワーク」の名のもとに覆い隠されてきた、能力がある人とない人、成果を出す人とやったフリをしているだけの人の違いが、テレワークによって可視化されるようになるのです。

結果、上司におべっかを使っているだけのゴマすり人間は、全く評価されなくなります。上司のなかには、自分にすり寄ってくる人間を重用する情実人事を行う人もいますが、テレワークが浸透すればこの手の情実人事は一切通用しなくなります。

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