好評の「媚びない人生」対談シリーズ。今回は、最年少上場記録を塗り替え、10月1日には東証一部上場も果たした25歳の起業家で、書籍『リブセンス<生きる意味>』でも話題になっている村上太一氏との対談、後編をお届けします。今、2人が読者に伝えたいメッセージとは。(取材・構成/上阪徹 撮影/石郷友仁)
群れから離れることが、最終的に自分を強くする
株式会社リブセンス代表取締役社長。1986年東京都生まれ。高校時代から起業に向けた準備を開始。2005年、早稲田大学政治経済学部に入学後、「ベンチャー起業家養成基礎講座」を受講し、そのビジネスプランコンテストで優勝。2006年に大学1年生でリブセンスを設立。2009年大学卒業。2011年12月、史上最年少25歳1カ月で東証マザーズへ株式上場。2012年10月、東証一部へ変更。ロングインタビューによる書籍に『リブセンス<生きる意味>』(上阪徹著)。
村上 高校時代から考え始め、大学時代はひたすら起業に取り組んでいた私は、よくストイックだと言われます。でも、もっとストイックな若い人はたくさんいるんですよね。それこそ受験勉強で、私が仕事に使ったのと同じくらいか、それ以上の時間を使った人もいるはずです。そうした何かの対象を与えてあげれば、若い人はものすごく頑張ると思うんです。頑張れる力は持っているのに、やりたいことを考えるきっかけが与えられていないのが、一番問題だと思っています。
キム 課題が設定されると、それに対してものすごくストイックに努力する。そんな学生が、日本の中にはいっぱいいる。それは事実でしょうね。でも、それは、模範生になるためのストイックさであって、イノベーターになるためのストイックさではないような気がするんです。
イノベーターであるとは、自分がどういう山を登るのかという、その課題設定、目標設定を自分がすることです。問題を与えられて、その問題をいかに早く解決するかではなく、そもそも自分にとって大切な問題とは何なのかを発見して、解決策を導き出し、それを実行して、解決していく。ここでは、ある意味、孤独な道のりが必要になります。
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特任准教授。韓国生まれ。日本に国費留学。米インディアナ大学博士課程単位取得退学。中央大学博士号取得(総合政策博士)。2004年より、慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構助教授、2009年より現職。英オックスフォード大学客員上席研究員、ドイツ連邦防衛大学研究員(ポスドク)、ハーバード大学法科大学院visiting scholar等を歴任。アジア、アメリカ、ヨーロッパ等、3大陸5ヵ国を渡り歩いた経験から生まれた独自の哲学と生き方論が支持を集める。本書は、著者が家族同様に大切な存在と考えるゼミ生の卒業へのはなむけとして毎年語っている、キムゼミ最終講義『贈る言葉』が原点となっている。この『贈る言葉』とは、将来に対する漠然とした不安を抱くゼミ生達が、今この瞬間から内面的な革命を起こし、人生を支える真の自由を手に入れるための考え方や行動指針を提示したものである。
ただ、これは今の若者ができないのではなくて、すべての時代における、すべての国の若者がそうだったんですね。誰も孤独にはなりたくない。群れと同じことをして、そこから離れることには不安を覚える。自分自身の未熟さについて、誰よりも自分自身が熟知しているからです。しかし、群れから離れることが、最終的に自分を強くするのだ、ということに気づいて、自らそれを実践し、その経験を自分の力に変えていった人が、大きな成功を勝ち取っていったんだと思うんです。
村上 イノベーターがいないというのは、確かですよね。ゼロから1を生み出せる人は少ない。言われたことはちゃんとやるけれども、何をやるかまで決めていける人は、本当に少ないです。
キム ですから、ストイックさというのは、とにかくガムシャラに頑張るのではなく、それは頑張るに値するのかどうか、一度立ち止まる必要があると思うんです。
もっというと、若いときには、悩みますよね。本当にいろんなことで悩む。その悩みをどうすればいいか、と相談に来る人も多い。ただ、僕が言っているのは、あなたが前提にしているその悩みというのは、本当に悩むに値するものなのかどうか、ということです。あなたの人生の貴重な時間、大切な時間を使って、悩むべきことなのかどうか、と。どうして悩んでいるのか、その前提を疑ってみるべきなんです。
目の前に与えられた、いろんな任務などの目標に対しても同じです。自分自身で納得いくまで考えてみることが大切です。そしてもし、頑張る前提がなければ、自分で作り上げるというくらいの気概を持つ人間になろうとすることです。それが、孤独ではありつつも、イノベーターであり、革新者であるための必要条件だと思うんです。